夏の怪談で必ずと言っていい程出て来るのが、
番町皿屋敷」というお話はみなさんも
一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

お菊」という美人の下女が、仕えていた主が
大事にしていた10枚1組の高麗皿を割ってしまい、
それが原因で主に切り捨てられ、無惨にも古井戸
投げ捨てられ、夜な夜な古井戸から上半身を出し
「イチマイ、ニマイ…」と恨めしながら数え始めるも、
9枚目を数えたところで、「イチマイタリナイ…」と言って
泣き叫ぶ怪談です。

そんな有名なこの「お菊の井戸」には、
他にも様々な言い伝えが残されているのです。

例えば、あまり知られていないのが、
お菊が皿を割ってしまった際、主の妻から拷問を受け、
中指を切り取られ、軟禁されるのですが、
実はその時に一度抜け出していたというのです。

逃れたい一心で、着物がはだけるのも構わず走り続け、
その途中で通った坂が「帯坂」と呼ばれ、
現在も靖国通りの九段南四丁目付近にあります。

その後、捕まってしまい最終的には
古井戸に投げ捨てられるのですが、
お菊の怨念は凄まじく、自分が切られた中指の
恨みを晴らすかのように、女主の子供が産まれた時、
子供には中指が無かったと言われています。

また、お菊が最後に投げ捨てられる古井戸ですが、
実はお菊が投げ捨てられる前にも、千姫という将軍の娘が
当時恋仲にあった若侍が侍女と浮気したことに腹を立て、
二人もろとも殺し、お菊と同じ古井戸に投げ捨てたと言われています。

それほど凄惨な出来事が起きた古井戸だからこそ、
歌舞伎や狂言で演目が行われる際、
役者や一座の人々は、今も祟りを恐れて
お菊の霊を弔うお菊稲荷神社にお参りにいくのが
習わしとなっているそうです。

あと、お菊が幽霊となって皿を数える際、
9枚目を数えた時に代わりに「ジュウマイ」と言ってあげると
大人しく消えてくれるという都市伝説もあります。