農家の叫びが火をつけた「令和の百姓一揆デモ」

令和の百姓一揆:農家の叫びと影に潜む政治の影

2025年3月30日、全国14都道府県でトラクターのエンジン音が轟いた。この「令和の百姓一揆デモ」は、日本の農業が直面する危機を訴える大規模な運動だ。主催は「令和の百姓一揆実行委員会」で、山形県の農家・菅野芳秀氏が代表を務める。農家の時給が10円とも言われる過酷な現実を背景に、彼らは所得補償の拡充と食料自給率の向上を求め、政府に声を届けた。東京では約30台のトラクターと3200人(主催者発表)が集結し、六本木や表参道を埋め尽くす異様な光景が広がった。

特に心を打つエピソードがある。山形の農家がデモで「子どもに農業を継がせられない」と涙ながらに語ったのだ。江戸時代、年貢に苦しんだ農民が一揆を起こしたように、現代の農家もまた生存をかけた闘いに挑んでいる。だが、この運動の純粋な叫びに、別の意図が絡み始めている。

れいわ新選組の影、策略の匂い

農家主体のデモと強調される一方で、「れいわ新選組」の存在が注目を集める。党代表の山本太郎氏はXで「参加するぞー!」と宣言し、個人としてデモに加わった。れいわの政策――全量買い取り制度や農薬規制強化――はデモの求める農家支援と一致する。副代表のたがや亮氏も「ごはん会議」で農政転換を訴え、党として運動に寄り添う姿勢を見せる。だが、ここに奇妙な違和感が漂う。

ある参加者の証言が興味深い。「デモの準備中、れいわの支持者がビラを配っていた」との声だ。別の農家は「山本が来るのはいいが、彼の過去が気になる」と漏らす。れいわが直接主導している証拠はないものの、クラウドファンディングで集まった1400万円を超える資金に党の影響が及んでいるのではないかとの憶測が飛び交う。農家の切実な訴えが、政治的アピールの道具に変貌する可能性が浮上しているのだ。

山本太郎の過去、東北農家との因縁

山本太郎氏の行動の裏には、彼の歴史が絡む。2011年の福島第一原発事故後、彼は反原発運動で「東北の農産物はベクれてる(放射能汚染されている)」と発言。2013年には国会弁当を「ベクれてる」と揶揄し、福島農家から「風評被害を広げた」と非難された。謝罪らしき言葉はあったものの、明確な責任は認めず、東北の農家との溝は深い。それなのに、なぜ今、彼は東北農家のデモに肩入れするのか。

福島のある農家はこう語った。「あの言葉で米が売れなくなった。今さら応援されても信用できない」。山本氏の参加は、彼の原発批判の一貫性や弱者支援の姿勢をアピールする機会なのかもしれない。しかし、Xでは「偽善的」「厚かましい」との声が飛び、彼の動機に疑問符がつく。

陰謀の深層、政治的乗っ取りの危険性

令和の百姓一揆デモ」に潜む陰謀の匂いは、政治利用の可能性だ。X上で「れいわ新選組が農家を利用している」との批判が散見される一方、歴史を振り返れば、社会運動が政治勢力に吸収された例は多い。フランスの黄色いベスト運動も、純粋な市民の怒りが政党に絡め取られた。心理学的視点では、山本氏の行動は過去の過ちを正当化し、信頼を回復する試みとも解釈できる。だが、農家側は「誰でもいいから助けてほしい」と切実だ。この温度差が、運動の方向性を歪めるリスクを孕む。

興味深いのは、れいわの支持層が若者や社会的弱者に広がっている点だ。産経新聞とFNNの調査(2025年2月)では、30代の支持率が自民党を上回る。彼らのポピュリズム的アプローチが、デモを政治的舞台に変える可能性は否定できない。

東北の田畑に響く希望と影

東北の農家にとって、このデモは再生への一歩だ。原発事故で傷つき、山本氏の発言でさらに苦しんだ彼らにとって、トラクターの音は故郷への想いを乗せた叫びでもある。参加した市民が「食を守れ」とエールを送る姿は、消費者との連帯を象徴する。しかし、政治の影が濃くなるほど、その声が届かなくなる危険もある。福島の農家が「米を作り続けるのは誇り」と語るように、彼らの闘いは悲しみを越えた希望でもある。

一方で、れいわの関与は議論を呼ぶ。政策の一致や山本氏の個人的共感が背景にあるとはいえ、過去の矛盾が農家との間に暗い影を落とす。彼らの参加が純粋な支援か、それとも支持拡大の策略かは依然として不明だ。

農家の声、その行方

「令和の百姓一揆デモ」は、菅野芳秀氏ら農家が主導し、所得補償と食の未来を求める運動だ。れいわ新選組の関与は、思想的共鳴からくるものだが、政治的意図が絡む可能性は拭えない。トラクターの轟音が都心に響く中、農家の純粋な訴えが歪められず、政府に届くことを願うしかない。東北の田畑に吹く風は、希望の種を運ぶのか、それとも新たな混乱を予告するのか。真相はまだ、誰にも見えていない。

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