和歌山県の新宮の方に
熊野三山」という由緒正しい神社があり、
こちらはカラスを神様のお使いとして奉っています。

黒い体に不気味な鳴き声、ゴミを漁る姿が嫌悪され
忌み嫌れるカラスですが、古くは「日本書紀」から登場し、
神武天皇を導いた神の使い黄泉の使者と考えられてきました。

神使のカラスは三本の足を持ち
八咫烏(やたがらす)」と呼ばれています。

古代、熊野の山々で修行する修験者達は
補陀落渡海(ふだらくとかい)」という捨身行
すなわち入水自殺を修行と呼び
次々と海へ沈んでいきました。

その先に常世の国があると信じて。

江戸時代になると、死と極楽に憧れた当時の人々は
行列をなして熊野を目指しました。

道は険しく、途中で亡くなる者も多くありました。
屍をついばむ神の使いの姿を人々は見たことでしょう。

天皇や武将も熊野信仰に熱く、
ついには「牛玉宝印(ごおうほういん)」という
カラス文字で書かれた札が作られました。

この紙の裏に約束事を記して相手と契約すると、
約束を破った側には恐ろしい報復がまっています

まず熊野のカラスが3羽死に、
その後に相手も血反吐を吐いて
もがき苦しんで死ぬ
といいます。

これは、あの有名な高杉晋作の「三千世界の烏を殺し…
という都都逸の元ネタになるほど、有名な言い伝えです。

神の使いを3羽も殺してしまうほど、
お前は罪深いことをした

極楽に憧れ、地獄を心の底から恐れていた
当時の人々にとっては、それはそれは
怖い契約書だったことでしょう。

ちなみに、牛玉宝印は現在でも
全国にある熊野系列の神社の
一部の神社で買うことができます

何か重い契約を交わしたい時に
使用されてみてはいかがでしょうか。

熊野のカラスが3羽死んだ時、
さて相手はどうなるのでしょう。

神のみぞ知る話です。