怖い話ですが、医学の発達していない時代は、人の生き肝が何よりの良薬とされていた時代がありました。だからといって人を殺して盗むわけにもいかず、病気やケガで死んだ人の墓を荒らして肝を盗むものもいたそうです。

その時代には、墓の番人として小屋が立ててあったそうです。そして、24時間体制で墓守りをしていたそう。あちらこちらで墓場が荒らされるので、番をしていた若者たちは面目丸潰れでした。

今度こそ、墓荒らしの犯人を捕まえる」と番人の中に仙八という若者がいました。

仙八は、死体の入った棺桶の上に自分も呼吸ができるようにと、穴を空けた棺桶を用意して入って待っていたのです。夜中になるとまた、新しい墓を荒らす音が聞こえていました。翌朝には墓は掘り返されていて、仙八の入った棺桶も消えていました

次の日に仙八を捜索していた村人たちは、大きな木の下で腹を切り裂かれ、生き肝を取られた、死体を発見したのです。

その男はもともとこの辺に住み着いた豊後訛りのある放浪者でした。ときどき村には竹細工などを売りに来ていた男で、髪を髭が伸び放題。そしてその男の見た目は鬼のよう。子どもたちはたいそう、怖がっていました。

そして、その男の腰にぶら下げられた皮の袋の中からは、乾燥した胆が大量に出てきたのでした。その後、仙八も草の生い茂った草村の中から無事発見されたのでした。

あれは、お前がやったのか?」と村人が問うと、仙八は涼し気に笑っているだけでした。

ただ、その後は墓あらしはぱったりとなくなったのだそうです。