丸亀製麺のカエル混入騒動:2023年の異物混入と陰謀説の真相とは?

2023年、丸亀製麺のテイクアウトうどんにカエルが混入したとの報告がSNSで拡散され、大きな波紋を呼んだ。当初は「作り話」や「AI生成画像」と疑われたが、店舗側がカット野菜の仕入れ過程での混入を認めた。しかし、「ライバル企業による妨害」や「内部バイトテロ説」が囁かれ、陰謀論が飛び交った。この騒動の裏側に迫る。

騒動の発端、その衝撃的な拡散

2023年5月21日、長崎県諫早市の「丸亀製麺諫早店」で販売されたテイクアウト商品「ピリ辛担々サラダうどん」に、緑色のカエルが混入している動画がSNSに投稿された。この商品は、5月16日に発売されたばかりの「丸亀シェイクうどん」シリーズの一品で、透明なカップにうどんと生野菜を入れ、振って食べる斬新さが話題だった。投稿者はカップ底に動くカエルを撮影し、「衝撃を受けた」とコメント。翌22日には動画が急速に拡散され、「カエル入りうどん」としてネットを騒がせた。

初期の反応は懐疑的だった。X上で「作り話だろ」「AIで生成した画像じゃないか」との声が上がり、投稿者の意図を疑うコメントが溢れた。あるユーザーは「こんな目立つカエルが混ざるなんてあり得ない」と指摘し、異物の鮮明さが逆に不信感を煽った。だが、5月23日、丸亀製麺が公式サイトで謝罪を発表。「管轄保健所に指導を仰ぎ、原材料(野菜加工工場)由来の混入と判断した」と説明し、生野菜を扱う全工場で立ち入り検査を実施すると表明。疑惑の一端は収まったが、新たな火種が生まれた。

陰謀説の浮上、「ライバル企業」や「内部テロ」の影

公式発表後も、一部で「陰謀説」がくすぶった。まず囁かれたのが「ライバル企業による妨害」だ。丸亀製麺を運営するトリドールホールディングスは、2023年3月期に売上高1928億円を記録し、国内839店舗を展開する外食大手の地位を確立。同時期、吉野家や松屋もコロナ禍からの回復を図っており、競争は熾烈だった。Xでは「ライバルが丸亀の新商品を潰すために仕込んだのでは?」との憶測が飛び、「外食業界の闇」と結びつける声もあった。

もう一つの説は「内部バイトテロ」だ。目撃談として、Xに「バイトがふざけてカエルを入れた可能性はある」「衛生管理が甘い店舗ならあり得る」との投稿が散見された。2022年の吉野家「紅しょうが直食い」や2023年スシロー「醤油差し舐め」など、飲食店での迷惑行為が続発していた時期だけに、こうした推測は勢いを増した。カエルの「あまりにも目立つ混入」が、意図的な行為を連想させたのだ。ある投稿者は「工場で混入ならもっと細かい虫のはず。こんな丸々したカエルは不自然」と分析し、議論を過熱させた。

公式見解と現実、そのギャップ

丸亀製麺の公式見解は明確だった。「カエルはサラダミックス(生野菜)の加工工場で混入した」とし、5月23日から25日まで関連商品の販売を休止。検品体制強化のため、取引先工場の立ち入り検査を実施した。朝日新聞(2023年5月23日)によると、混入元とされる工場は複数店舗に供給しており、保健所の調査でも人的な介入は否定された。実際、長野県のスーパーで同年5月にサラダにカエルが混入した事例もあり、生野菜由来の異物混入は珍しくなかった。

反論として、ライバル企業説には証拠がない。外食産業の競争が激しいとはいえ、意図的な妨害にはリスクとコストが伴う。経済ジャーナリストの磯山友幸氏は「企業がこんな目立つ方法で妨害するとは考えにくい。利益より損失が大きい」と分析。内部テロ説も、店舗スタッフがカエルを持ち込む動機や機会が乏しく、監視カメラや同僚の目がある中で実行困難との指摘が強い。結局、公式発表を裏付ける具体的な反証は浮かばなかった。

すき家異物混入との類似点、その不気味な符合

2025年のすき家「異物混入」事件(ネズミ・ゴキブリ混入)と比較すると、共通点が浮かぶ。どちらも異物が「目立つ形で発見」され、SNSで瞬く間に拡散。すき家のネズミは死骸だったが、丸亀のカエルは生きたまま動き、視覚的インパクトが強烈だった。両事件とも「異物が大きすぎて不自然」と陰謀説を呼び、Xで「誰かが仕込んだのでは」との声が上がった。すき家は全店閉鎖で対応し、丸亀は一部商品の販売中止で収拾を図ったが、消費者の不信感は根強かった。

心理学的視点では、「統制欲求」が陰謀説を助長した可能性がある。不測の事態に直面した人々は、単純な事故より「誰かの意図」を求めて安心しようとする。社会学者の宮台真司氏は「SNS時代は情報の断片が誇張され、陰謀論が拡散しやすい」と解説。丸亀とすき家の事例は、この傾向を象徴している。

騒動の影響と残された謎

丸亀製麺は新商品のPRキャンペーンを中止し、ブランドイメージに傷を負った。2023年5月時点で「丸亀シェイクうどん」は発売3日で21万食を売り上げたが、騒動後は販売休止に追い込まれた。一方、2023年10月期のトリドール決算では売上高が前年比10%増と回復傾向を示し、長期的な影響は限定的だった。消費者からは「カエルは気持ち悪いけど、対応は早かった」と評価する声もあった。

陰謀説は解消されないまま燻り続ける。「ライバル企業」や「内部テロ」の証拠は出ず、カット野菜の混入が真相とされるが、異物の鮮明さが不信感を拭いきれなかった。すき家との連鎖的な異常行動は、外食産業の衛生管理への警鐘か、それとも偶然の符合か。その答えは、カエルの跳んだ先に見え隠れしたままなのかもしれない。