深夜のエレベーターゲームの起源と広がり

深夜のエレベーターゲーム

深夜のエレベーターゲームは、都市伝説として世界中で知られており、特に日本や韓国で広く語られている。ルールはシンプルで、10階建て以上のビルでエレベーターに一人で乗り、4階、2階、6階、2階、10階、5階の順にボタンを押すと、通常のフロアではなく「異界」と呼ばれる場所に到達するとされている。この異界は薄暗く、誰もいないフロアで、遠くから女の笑い声が聞こえ、振り返ると黒い影が近づいてくると言われる。起源については諸説あるが、2000年代後半にインターネットの掲示板やYouTubeで広まり始めたとされる。最初の記述は英語圏のフォーラムに遡るとする説もあるが、具体的な出典は不明である。日本では、オカルト系のブログやSNSを通じて拡散し、日常のエレベーターが恐怖の入り口となる設定が多くの人を引きつけた。韓国では類似の「エレベーター怪談」として独自の解釈が加わり、国際的な都市伝説としての地位を確立している。

体験者による詳細な報告

エレベーターゲームを試したとされる人々の報告は、オンライン上で多数確認されている。ある投稿者は「深夜のオフィスビルで試したところ、5階で止まったエレベーターが開いた瞬間、薄暗いフロアに変わっていた。蛍光灯がチカチカしており、遠くで『クスクス』という笑い声が聞こえた。慌てて戻る手順を試したが、ボタンが反応せず、冷や汗が止まらなかった」とXに投稿している。別の報告では「異界のフロアは埃っぽく、空気が異様に冷たかった。廊下の奥で黒い影がゆらりと動くのが見え、エレベーターに戻るまで心臓がバクバクした」とブログに詳細が記述されている。戻る手順として、1階を押してすぐにドアを閉じる必要があるとされるが、失敗すると「永遠に閉じ込められる」との噂が恐怖を増幅させている。

SNS上では、さらに具体的な体験が語られている。例えば、「深夜に友人と試したが、エレベーターが5階で止まった後、ドアが開く前に女の声が聞こえてきた。ドアが開くと誰もいないフロアで、影が近づく前に急いで戻った」との投稿や、「異界で携帯が圏外になり、パニックになった。なんとか1階に戻れたが、その後エレベーターに乗るのが怖くなった」との声もある。これらの報告は「実際に感じた」「錯覚にすぎない」と意見が分かれ、議論を呼んでいる。共通するのは、異界の描写が薄暗さや不気味な静寂、そして笑い声や影といった要素で統一されている点である。

恐怖の要素と現実的背景の分析

この都市伝説の恐怖は、いくつかの要素によって構成されている。まず、日常的に使うエレベーターが異界に繋がるという身近さが、不気味さを際立たせている。誰もが利用する空間が突然異次元に変わるという設定は、現実と非現実の境界を曖昧にし、日常への不安を植え付ける。また、ルールの厳格さ—特定の順番で階を押す、戻る手順を間違えない—が強い緊張感を生み、失敗した場合の「永遠に閉じ込められる」という結末が恐怖を極端に高めている。さらに、異界での描写(薄暗いフロア、女の笑い声、黒い影)が具体的で視覚的・聴覚的なイメージを喚起し、体験者に強い印象を残す。

現実的な背景としては、エレベーターの機械的な不具合が影響している可能性が指摘される。例えば、古いビルのエレベーターでは、照明のちらつきや停止時の異音が発生することがあり、これが異界の雰囲気を生み出す要因となり得る。深夜の静寂は些細な音を増幅し、錯覚や恐怖感を誘発する。心理学的には、人間が暗闇や閉鎖空間で不安を感じやすい傾向があり、エレベーターという狭い空間がその効果を強めていると考えられる。ビル自体の構造や老朽化も影響し、普段と異なるフロアに見える状況を作り出したケースが「異界」と解釈された可能性もある。それでも、ルールの複雑さと不気味な噂が、単なる錯覚を超えた恐怖として語り継がれている。

現代におけるエレベーターゲームの影響と広がり

現在も、深夜のエレベーターゲームはSNSや動画プラットフォームで話題に上り続けている。Xでは「異界っぽいフロアにたどり着いた」「笑い声が耳に残って眠れない」との投稿が定期的に現れ、挑戦する者が後を絶たない。YouTubeでは、実際にゲームを試す動画がアップロードされ、数百再生から数万再生に及ぶものまで存在する。これらの動画では、薄暗いフロアや不自然な物音が映し出され、視聴者の間で「本物か?」「演出だろ」と議論が巻き起こっている。一方で、「エレベーターの不調にすぎない」「深夜の錯覚」と冷静に分析する意見も多く、信憑性については懐疑的な見方が強い。

この都市伝説は、若者を中心に非公式なチャレンジとして広まり、一部では「ホラー体験」として楽しむ文化も生まれている。しかし、深夜のビルに忍び込む行為が問題視されるケースもあり、警備員に見つかったり、危険な状況に陥ったりした報告も散見される。実際の証拠は存在せず、エレベーターゲームの異界は錯覚や演出によるものと結論づけられることが多い。それでも、日常と非日常が交錯する魅力が衰えず、都市伝説としての人気を維持している。