「すぐにけせ」現象の起源と背景
1992年にスーパーファミコンで発売された「真・女神転生」は、深いストーリーと悪魔との交渉で知られる名作RPGだ。しかし、このゲームには不気味な噂が付きまとう。それが「すぐにけせ」という赤文字メッセージだ。ゲーム起動時に極めて低い確率で、黒い画面に赤い文字で「すぐにけせ」と表示され、コントローラーが一切反応しなくなるという現象が報告されている。
この噂は特に初期ロットのカートリッジで発生するとされ、発売直後に購入したプレイヤーから奇妙な体験談が寄せられた。初出は定かではないが、1990年代後半のゲーム雑誌の読者コーナーや、当時普及しつつあったパソコン通信の掲示板で話題に上ったとされる。あるユーザーは「電源を切っても再起動時に同じ文字が現れ、怖くなってカートリッジを抜いた」と語り、ただのバグを超えた恐怖を感じたと振り返っている。
操作不能に陥る不気味な瞬間
「すぐにけせ」の怖さは、その異常な挙動にある。通常のゲームエラーならリセットで済むが、このメッセージは電源を落としても再び現れるケースが報告されている。ある報告では、表示と同時にBGMが途切れ、低い唸り音のようなノイズが流れ出したという。別のプレイヤーは、画面の文字が微かに揺れているように見え、「何かに監視されている気がした」と証言している。
特異な体験として、起動直後にメッセージが現れ、その後セーブデータが全て消えていたという話もある。こうした状況が、プレイヤーに「ゲーム自体が拒絶している」と感じさせ、背筋が冷たくなる瞬間を生み出した。
当時のプレイヤーが語る恐怖
具体的なエピソードで特に印象的なのは、1990年代に友人間で広まった話だ。ある中学生が自宅で「真・女神転生」をプレイ中、「すぐにけせ」が表示され、同時に部屋の照明が一瞬チカチカしたという。偶然の可能性が高いが、「ゲームが現実にも影響を及ぼした」と感じた彼はその後カートリッジを押し入れに封印した。別の証言では、深夜に起動した際、メッセージが現れた後、テレビからかすかなノイズが続き、怖くてコンセントを抜いたという報告もある。
これらの話は、当時のプレイヤーコミュニティで語り継がれ、「すぐにけせ」が単なるバグではなく、何か超自然的な力の現れではないかとの憶測を呼んだ。
技術的解釈と公式の沈黙
技術的な視点で見ると、「すぐにけせ」は初期ロットのROMチップの不具合が原因と考えられる。スーパーファミコンのカートリッジは経年劣化でデータ読み込みエラーを起こすことがあり、異常な表示を引き起こす例は他タイトルでも確認されている。しかし、なぜ「すぐにけせ」という具体的な文字列が現れるのかは不明だ。一部では、開発者が意図的に仕込んだ隠しメッセージ説もあるが、アトラスは公式に一切言及していない。この沈黙が、逆に噂に不気味な信憑性を与えている。
当時の反応は分かれ、「笑いもの」とする者もいれば、「怖すぎて売った」と語る者もいた。あるユーザーは「メッセージが出た後、ゲームを起動するたびに緊張するようになった」と述べており、プレイヤー心理に与えた影響は小さくない。
恐怖を煽る心理的要因
「すぐにけせ」が怖い理由を考えると、ゲームがプレイヤーに直接命令する状況が大きい。通常、ゲームは遊ぶ側が主導権を持つが、このメッセージは「やめろ」と警告し、操作を奪う。これが無力感と不安を生み出す。また、赤い文字は危険を連想させ、低いノイズと相まって本能的な恐怖を刺激する。人間が未知の出来事に直面した時、それを超自然的な力に結びつける傾向も、この噂を増幅させた一因だろう。
デジタル時代における「警告」として見るのも興味深い。古来、自然災害が神の怒りとされたように、現代ではゲーム内の異常が何か得体の知れない存在の仕業と感じられるのかもしれない。
「すぐにけせ」が残す不穏な響き
SFC版「真・女神転生」の「すぐにけせ」は、バグか意図的な仕掛けか、あるいは単なる偶然の産物か、真相は今も解明されていない。中古市場で初期ロットが取引される現代でも、「あのメッセージが出るかも」と恐れるファンは存在する。ゲームを起動するたび、黒い画面に赤い文字が浮かぶ瞬間を想像すると、どこか落ち着かない気分になる。
古いカートリッジを手に持つなら、深夜に試してみるのも一興だ。ただし、画面が暗転し、奇妙な音が聞こえてきたら、ためらわず電源を落とす準備が必要かもしれない。
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