隠し念仏」は浄土真宗から異端とされた教えを元にした、
秘密主義の信仰で、岩手を中心として行われています。

東北の信仰を取り入れた、
善鸞(浄土真宗開祖・親鸞の長男)の異端の教えから生まれ、
弾圧で秘密主義を強め、
他宗教を取り込みながら多数の派閥に分裂したことで、
その全容をつかめないことから、
善鸞の異端の教えを元にした信仰を「隠し念仏」と呼ぶそうです。

普段は別の宗教の信者として行動していますが、
人目を避けて信仰をともにする仲間が集まり、
妖しい儀式をおこなっている
とウワサされています。

隠し念仏の特徴入信の儀式「オトリアゲ」で、
入信希望者は人為的にトランス状態になり、
善知識と呼ばれる指導者が「助けた」ということで入信を認められます。

トランス状態を作るために、
ただひたすら念仏をとなえさせる密教的な方法や、
派閥によっては罵声を浴びせ続けるなど、
洗脳やマインドコントロールのような儀式もあるようです。

隠し念仏は「秘密」「妖しい儀式」というイメージが強く、
情報が公開されるようになったとはいえ、
ほんのわずかな情報だけで、
いまだに隠し念仏は謎だらけの信仰です。

岩手の詩人・宮沢賢治の作品に、
隠し念仏の善知識を題材にしたと考えられる
「秘事念仏の大師匠」などがあります。

賢治の時代に隠し念仏は、
公然の秘密のような状態だったのではないでしょうか。

賢治はシャーマンやトーテムポールのような、
民俗学で使われはじめたばかりの用語を使い、
生まれた家は浄土真宗ですが、
賢治自身は法華経に入門するなど、
民俗・宗教に強い関心をもっていました。

賢治が生まれ育った花巻という地域は、
隠し念仏が盛んだった地域のようで。

賢治が民俗・宗教に強い関心をもつのに、
隠し念仏が強い影響を与えたのかもしれません。