土を食材として提供するフランス料理店の話を聞いて、
食への探求はそこまで行ったのかと驚いていましたが、
どうやらその店独自の創作料理ということで、
ほっとしたような、少し残念でもある複雑な気持ちです。

調べてみると、土を食材として利用する風俗は実際にあり、
アメリカ南部では加熱処理をした土が販売されているそうです。

日本でも、妊婦が土壁や地面の土を食べる、
土食症を発症した事例が古くからあります。

これは妊娠によって、母体に亜鉛や鉄分が不足したことで、
味覚障害をおこした事が原因だと考えられます。

妊娠と土食症が結びつく事から、タンザニアのペンパ島では、
女性が土を食べるようになると、妊娠の兆候として喜ばれます。

風俗としての土食は、日本ではアイヌに、
土を使った料理『ラタシケブ』があったことがわかっています。

ラタシケブ』は煮物や和え物のような料理で、
食材の組み合わせなど多数の種類があり、
その中に土を調味料として使用した『ラタシケブ』がありました。

『ラタシケブ』の作り方は、
ウフトウリ(山菜)を乾燥させたものを一晩水につけて戻し、
さっとゆでたものを5センチ位に切り、
クロユリの鱗茎を茹でつぶし、鮭や鱒の卵をほぐす。

それらを獣油(オットセイかアザラシの脂)を加えながら混ぜ、
調味料として粉末にした珪藻土を入れて完成です。

珪藻土は藻の化石で、
アイヌの言葉で「チエトィ:我らの食べる土」と呼ばれています。

獣達が珪藻土を食べることを知っていたアイヌが、
自分たちの文化に土食を取り入れ、明治のはじめ頃には、
この風俗はおこなわれなくなっています。

珍味として食べられていたようなので、
味の方は好き嫌いが別れていたのでは無いでしょうか。

味はともかくとして、土を食べることは不可能ではなく
土には可能性が秘められているといえるかもしれません。