鳥取県の山間部には、
タコにこだわった祭りが伝わっています。

伯耆町(ほうき)の福岡神社でおこなわれる、
蛸舞式神事』がそうです。

境内にある「舞堂」と呼ばれる建物で行われるのですが、
建物の中には関係者以外は入れないので、
観客は壁に空いた木枠の間から神事の様子を見ることになります。

天井の梁が低く造られている舞堂に、
フンドシ姿の男が8人あつまり、
神官からタコの姿をした藁人形が渡されて、
神事がはじまります。

タコを渡された男は仁王立ちになり、
タコを頭の上に掲げ、ソーレソーレの掛け声で、
残りの男たちがタコを持った男を持ち上げます

これを繰り返し行うと、
今度はタコ役の男が天井の梁にしがみつきます

今度も残った男たちが、
ソーレソーレの掛け声でタコ役の男をくるくる回します。

タコ役の男は8回まわされると、
梁で擦れた部分が茹で上がって真っ赤です。

梁の方にも長年タコを回してできた、
皮膜が禿げて木の地肌が見えている部分があります。

伯耆町は山間部の集落で、
海産物とは縁遠いのに、
どうしてタコにこだわるのでしょうか。

それは、
福岡神社の主祭神「速玉男命(はやたまおのみこと)」が、
海でタコに助けられた言い伝えがあるからです。

神事の最初にタコを持ち上げたのも、梁を水面に見立てると、
波間から頭を出すタコを表しているように見えます。

由来を知らないと意味不明の神事ですが、
神話の出来事を再現した神事が『蛸舞式神事』です。