私の祖父が小さい頃の母に
語って聞かせた内容のお話だそうです。

しょっぱなからアレな話になりますが、
当時母たちが住んでいる所の近くには
知的障碍者の中年女性が暮らしていたそうです。

祖父は幼い母に、近所に住んでいる
その女性の存在を引っ張り出して思い出させると

「あの人も昔はあんなんやなくて、
近所でも評判のべっぴんさんで、
言い寄る男がたくさんおったんや」

と切り出しました。

そんな風に器量の良い娘さんらしかった女性は、
しかし特定の男性と交際するわけでもなく
普通に日々を送っていました

しかしある時から彼女は夜中になると頻繁に家から抜け出し
何処かへと出かけるようになった
そうです。

それに気づいた彼女の父親は、さてやはり男でもできたか、
とある夜に家を抜け出した娘の後を追い、
どんな男と逢引きしているのか確認しようとしました。

ですが、彼女の向かう方向は
どうにもこっそり逢引きするにしても妙なのです。

というのも、山の方の人気の無い方向で、
ついには近所の墓場に到着してしまったそうな。

これは何かおかしい、と思いながらも
父親は男の姿を確認するまでは隠れていようと、
娘の後を追い続けました。

すると娘の行き着いた先は、
ピラミッド型に小山となった無縁仏のすぐ下

彼女はそこで座り込み、何かに魅了されるように
薄気味悪い笑みを浮かべていたそうです。

ぞっ、とした父親は慌てて娘の下に近寄り、
叱りつけましたが彼女はそんな声など
まるで聞こえていないかの様子でした。

そして、父親はいつのまにか娘の手の中に
何やら小さなものが抱えられ、
撫でられていることに気づきました。

街灯もない時代の墓場にある明かりは、
月明かりくらいなものだったそうです。

その月明かりに照らされるそれは、
小さな生っ白いしゃれこうべだったそうな。

……で、まぁその後連れ帰った娘さんは……
というオチになるわけです。