日本の古典文学の代表『源氏物語』といえば、
主人公光源氏が上は60歳、下は10歳という、
さまざまな女性と関係を重ねる
昼ドラのような話だと思っている人もいると思います。
あながち間違いではありませんが、
実際は、光源氏という一人の臣下が、
准太上天皇という天皇に准じる位まで登りつめる
出世物語と見ることもできます。
しかし作者とされる紫式部は
なぜ『源氏物語』のような話を書いたのでしょうか。
紫式部は、当時栄華を極めていた藤原道長の娘、
中宮彰子に仕えた女房の一人でした。
宮中では、一条天皇の興味をひこうとして
女房たちがお仕えする姫に教養を与えたり、
珍しい絵や面白い物語などを用意したりしていました。
『源氏物語』もその一つで、宮中では
続きが気になって仕方がないというふうでした。
しかし、『源氏物語』の核となっているのは、
父桐壺帝の愛姫・藤壺への愛、
また弟朱雀帝の愛姫・朧月夜との禁忌などといった王権侵犯であり、
一条天皇のお目にかけようものなら謀叛とされてもおかしくはない内容です。
また、右大臣という特定の一族が一人勝ちしようとしている状況は
藤原摂関政治を彷彿とさせますが、
光源氏は、それに対抗していく勢力として描かれます。
ちなみに、光源氏にはモデルとなる実在の人物がいるとされていますが、
それは藤原道長ではありません。
紫式部は藤原道長の妾だったとも言われていますが、
そうであればこそ尚更、なぜ紫式部が藤原道長に一矢報いるような
内容の話を書いたのか、謎は深まるばかりです。
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