私の通っていた宮城県にある小学校の側に、
与兵衛沼という大きな沼がありました。

以前は殺人事件が起きたとか、
近くの病院の人が身投げしたとかいう噂のある沼です。

与兵衛沼の周りは森があって、
夏場の日中でもどこか薄暗い雰囲気があります。

学校からは当然子どもたちだけでの侵入は禁止されていましたが、
みんな、よくこっそり入り込んで釣りの真似事をしたり、
沼のどこかにいるという主の亀を探したりしました。

この与兵衛沼の近くに、
ぽっかりと口を開けている地下道がありました。

この地下道、今は改装されてとてもきれいなのですが、
以前は日中ですら薄暗く、どこか沼と同じ雰囲気がありました。

季節によっては沼からにおいが流れ込んできて、
生臭かったのをよく覚えています。

この地下道から、夜中に何か、
人間ぐらいの大きさの生き物が出てくる、という噂がありました。

人間ぐらいの大きさの何かが、地下道から登ってきて、
沼へと消えていくという噂です。

また、その逆に、沼から出てきた人間ぐらいの大きさの生き物が、
その地下道の奥へと消えていくという話も聞きました。

実際、この地下道を覗きこんだ時に、
地下へと続く階段の中央部分が
しっとりと濡れていることもよくありました。

これは沼からその何かが帰ってきた痕だったんでしょうか。

子どもによっては、
沼の主である亀があの地下道の奥に住んでいるんだ!
などと言っていましたが、あの大きさの亀がいるならば、
泳いでいるところを姿を見られてもおかしくないはずです。

子どもたちの噂のような都市伝説ですが、
結局何だったのか未だにわからないまま、
今の子どもたちにも語り継がれているようです。