長崎県野母崎半島の先にあるサーファーにも人気の
高浜海水浴場付近の黒緑色の砂浜にまつわる伝説です。

私は小学生の時にこの海水浴場から少し離れた所に引っ越しました。
街中からいきなりの田舎暮らしで最初は戸惑いましたが、
友人も徐々にできてくると地元のいろんな遊びや
穴場に連れて行ってもらいました。

その中で自然と教えられた昔からの言い伝えのような話です。
ですが、本当に地元の人は絶対にしないことのようです。

学校の夏休みには子供同士で自転車を飛ばし、
ちょっと離れた場所にでもどんどん行ったものですが、
その海水浴場に行くにはさすがに離れすぎているので
親の許可をもらいバスで友人の母親とともに数人で泳ぎに行きました。

私はその時が初めての海水浴場でとてもワクワクしていたのを覚えています。
しかし、海水浴場についてから何か違和感を覚えました。

砂浜が黒緑色をしているのです。
ベージュ色の砂浜のイメージが覆されました。
地元の友人に聞いたら阿池姫伝説の話をしてくれました。

この一帯を治めていた領主の娘が山にある大きな美しい楠に恋をします。
それは人々の口にのぼるほどでした。月日はたち領主の娘は美しく成長しました。

その頃領主は娘の恋した楠で船を完成させました。
いよいよ完成で海まで運んでいましたがあるところから
とても重くなり運ぶことができなくなりました。

領主が占者に尋ねると、娘を船に乗せて運ぶように告げられます。
言われたとおりに娘を船に乗せると船は動かすことが出来ました。

しかし、海まであと少しというところで突然の大嵐で地面が裂けて
一面大きな池となりました。

そして船は娘を乗せたままその池の中に消えていきました。

その後池の周りは妖気が漂い、娘を失った領主は嘆き悲しみ高僧を招いて
祈祷を行うと真っ赤な舌と五つの角を持つ龍が池から現れ
娘の姿に変身して言うのです。

私はもともと文殊菩薩なのです。
池のそばに祠を立ててあがめればこの池の守り神になりましょう」といったそうです。

この池は女池と呼ばれ、前は近くに小池の男池があったそうですが、
近年の工事で埋め立てられたそうです。

竜神を祀る大池とそのそばにある海岸の砂は
その時に黒く変色してしまい、その神聖な地の砂を勝手に持ち帰ると
必ず不幸になる
と言われています。

その話を耳にしてから20歳を過ぎて
家族とたまたま季節外れの海水浴場を散歩していた時、
他県から来たであろう家族ずれが海岸の岩を持って帰ろうとしていたので
「やめた方がいいですよ」と声をかけたら、
そばで、作業をしていた漁師さんが一言「やめとけ、不幸になるぞ」。

あまりに真剣な表情だったので持って帰ろうとしていた人は
手にしていた岩をあわてて捨てていました。

実際、親の同僚の人が知らずに持って帰って
骨折やら事故やらにたて続けにあって海岸に砂を戻した話をしていました。

嘘みたいな話ですが、地元の人は真剣に信じています