私の小学校はとても古く戦前に建てられました。
戦時中は、空襲などで亡くなった方たちを、
校庭に埋葬したとの話も聞いたことがあります。そんな小学校なので怪談話はたくさんあり、
全部でいくつあるか誰もわからないと思います。その数ある怪談の中で、
一番怖がられていた怪談が「グルグル女」です。うちの小学校は三階建て、
長方形の校庭を囲んでU字型で建っています。校庭から校舎を見て真正面に一番長い廊下があります。
一階は職員室や準備室の部屋があります。
二階は二年生と三年生の教室。三階は図書準備室や書庫などの
ほぼ使われていない部屋が並んでいます。その三階の廊下を曲がれば五年と四年の教室があります。
不思議だと思いませんか?
真正面の一番長い廊下なので、部屋もたくさんあります。それなのに三階だけほとんど使わないんです。
私がグルグル女の話を聞いたのは四年になったときです。「五時の帰宅メロディーが鳴り終わった後、
三階の長廊下に行ってはいけない。
もしどうしても行かなければならないときは走って逃げろ」です。四年の教室から外に出るには、
長廊下は通らなくてもいいのですが、
横切って階段を使わなくてはいけません。これは聞いた話なのですが、昔、四年生の女の子が、
忘れ物をして教室に戻りました。まだ時間はあると思っていたのですが、
探すのに手間取り帰宅メロディが鳴り出しました。忘れ物は諦め、すぐに帰ろうとしたけど、
首にかけていた家の鍵を椅子の背もたれに
引っかかってしまったそうです。家の鍵がないと
お母さんが仕事から帰宅するまで家に入れなくなってしまう。
女の子は慌てれば慌てるほど、なかな取れない。やっと取れ、急いで教室を出たけれど、
長廊下の手前でメロディが終わりました。長廊下を横切らなければ向こう側にある階段に行けない。
廊下は横には長いが、横切るだけなら数歩で階段です。女の子は一歩ふみだしました。
教室側の廊下から、長廊下に出て、
ふと長廊下側を見てしまったそうです。廊下の真ん中には下半身がない女の子がいたそうです。
その子はニヤッと笑い、両腕をグルグル回転させ、
足のない体を引きずりながら、帰ろうとする女の子めがけて、
すごい速さでやってきました。女の子は我に返り悲鳴をあげながら、階段まで走りました。
階段を二、三段下り、後ろを振り返ってみると、
グルグル女は腕を伸ばし、階段の上から女の子を掴もうとしていました。あと数センチだったそうです。


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