修学旅行へ行った時の怖い話です。
その時に泊まった旅館はとても古く
趣があるというよりは古ぼけた感じのする旅館でした。
それでも修学旅行は楽しいもので
友達とワイワイしていれば多少古かろうが
全く気になりませんでした。
部屋に続く廊下は板張りでギシギシときしみ
電気もついてはいるのですが廊下全体も薄暗い感じでした。
友達数人と部屋に入ると畳があり
8人ぐらいは寝れるぐらいの広さがありました。
荷物を置き部屋を見回すと
その一角に薄汚れた赤い何かの模様の入った布がかけられた
三面鏡がありました。
焦げ茶色で年季の入った台にかかる布を持ち上げ、
観音開きになっている扉をあけると
正面の鏡は放射状にひびが入っていました。
これだけ割れてちゃ使えないな
などと思いながら元のように布をかけると
何気なく三面鏡の後ろに何かあるのに気が付きました。
後ろに隠れていてよく見えずしゃがみこんで見てみると
何か紙のようなものが置いてありました。
今思うと置いてあったのではなく
剥がれ落ちていたのかもしれません。
その時は特に何も思わずそのままみんなで食事をし、
お風呂に入り布団を並べて敷くとおしゃべりで盛り上がりました。
しばらくすると先生の点呼があり消灯時間になりました。
各々が布団にもぐりこみしばらくヒソヒソと話していましたが
徐々に静かになっていきました。
私も昼間の疲れからかすぐに眠りについたのですが、
どのくらい時間がたったころでしょうか。
ざーっ、ざーっという音が耳に入りました。
徐々に眠りが浅くなったように感じ「何だろう」と頭でそう思った瞬間、
体が動かなくなりました。
金縛りになった瞬間に目が覚めましたが
となりの友達を呼びたくても声がでません。
腕も動かせず目線だけをどうにかとなりの友達に向けると
友達は普通に寝息を立てていました。
音はずっと同じテンポですぐ近くから聞こえているように思いました。
ふっと突然寝ている頭の上あたりに誰かいるように感じ
全身の力を入れ首を反らすようにして頭の上側を見ました。
そこには昼間の三面鏡があり開かれたその鏡の前で
白い髪の毛をとかす女の後ろ姿がありました。
ざーっ、ざーっと聞こえていたのは女が髪をとかす音だったのです。
あまりの恐怖に固まったままでいると
女は髪をとかす手を止めゆっくり振り返ってきました。
目を合わせたらいけないという思いが
とっさに頭をよぎり固く目をつむりました。
それからの事は覚えていません。
気が付くと外が明るくなっていて周りの友達も普通に寝ていました。
夢だったのかな、そう思い三面鏡を見ると
昨日の紙が倒れたのか横になって台の後ろから出ていました。
布団から出て手に取ろうとして
はじめてそれがお札だったことに気が付きました。
手に取り元の場所に立てかけふと三面鏡の台をみると
古い赤い布に数本の白く長い髪が絡みついていました。
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