毎年5月のゴールデンウィークに見頃を迎える花、ツツジ。
群馬県館林市には名勝、県立つつじが丘公園がある。

行ったことのない方でも、満開のつつじヶ丘公園の様子は、
テレビでニュースとして伝えられたり、
天気予報と一緒に映るバック映像として流れたりして、
見たことがあるだろう。

県立つつじヶ丘公園には約10,000株のツツジが植栽されており、
地元では「花山」と呼ばれ愛されているのだが、
この山に一本だけ松の木がある。

この松の木には、真夜中に「お辻」という女性の人魂が出ると、
大正生まれの祖母に聞いたことがある。

時は江戸時代。お辻は館林城主、榊原康政の側室だった。
美人で気立ても良く、優しいお辻は、康政の寵愛を一身に受け、
正室にうらやましがられていた。

お辻は正室の妬みと自分だけが康政の寵愛を受けることに気がとがめ、
「自分がいなくなれば・・」と城沼に身を投げ死んでしまう。

これを康政はたいそう悲しみ、お辻を偲び、
お辻をいつまでも忘れないように、死んだお辻が悲しまないようにと、
お辻の愛した花、ツツジを城沼の畔いっぱいに植栽し、
館林城主代々このツツジを守るよう命令した。

そのツツジの群生が、現在のつつじヶ丘公園になったのだ。

そのツツジの山からまるで自分の居場所を知らせるように、
松の木にお辻の人魂が出るのだという。

祖母が娘のころ、仕事が遅くなった帰り道に自転車で公園の前を通ると、
この松の木の上にぼ~ぅと白い煙のようなものが見えたそうだ。

もしかすると今でもお辻の魂は、この公園にさまよっているのかもしれない。