静岡県掛川市にある、小夜の中山という峠に残る言い伝えです。
昔ある一人の女性が、この峠を通り抜けようとして山賊に襲われました。

山賊はお金を盗んで去って行き、女性は気の毒なことに、
命を落としてしまいました。

その日から不思議なことが起こるようになりました。
大きな丸い石から、泣く声が聞こえるのです。

近くに住んでいる人々はこの石を夜泣き石と呼び、
恐れるようになりました。

小夜の中山には、久延寺というお寺があります。

このお寺のお坊さんが泣き声を気にして見に行くと、
なんと石のそばには赤ん坊がいたのです。

山賊に襲われた女性のお腹には赤ん坊がいて、
奇跡的にその子は助かり、切られた傷口から産まれていたのです。

夜泣き石とは、女性の魂の乗り移った石でした。

自分が命を落としたあと残された我が子を心配した母親が、
近くにあった石に乗り移り、誰かに赤ん坊を見つけてもらおうと
泣き声を上げていたのでした。

お坊さんは全てを悟りこの赤ん坊をお寺に連れて帰りました。
しかし、お乳をあげることができません。

考えた末にお坊さんは、お乳の代わりに
水あめでこの赤ん坊を育てることにしました。

この水あめは「子育てあめ」と呼ばれ、
今でも同じものが作られていて、手にすることができます。

立派に育った赤ん坊がそのあとどうなったかという話にはいくつかのパターンがあり、
敵を討ったというものや、敵と和解したというものもあります。

現在夜泣き石は、小夜の中山トンネル脇
久延寺に二か所に祀られています。