静岡県、大渕にある丸火自然公園には
大渕小僧と呼ばれる祠があります。

昔、父親も母親もいない男の子が
祖母と二人で貧しい暮らをしていました。

この男の子はいつも悪戯ばかりするやんちゃな子供だったので、
両親がいない寂しさから悪戯するのだろうと、
おおめに見ていた村人も、野菜を盗んだり、
家畜を殺したりする男の子の過激な悪戯に我慢が出来なくなり、
村中の人間で集まって話し合った結果、
この男の子を殺してしまおうという事になってしまいました。

村人は手にクワやカマを持ち、男の子と祖母の二人が暮らす
小さな一軒屋に押しかけ、祖母に男の子を渡すよう怒鳴りつけました。

祖母は男の子を守ろうとしましたが、力のある男達にはかないません。
男の子はとうとう村人に捕まえられ、連れて行かれることになってしまいます。

男の子の祖母は悔し涙を流しながら、
引きずられていく男の子に「子孫の代まで呪ってやれ」と言い放ちました。
男の子の命はここで事切れてしまいます。

しかし、祖母の言いつけを守ったのか、
村には奇妙な病気や飢饉が起こるようになりました。

男の子の祟りではないかと恐怖に怯えた村人は、
男の子の魂を鎮めるためにこの祠を立てたと言われています。

実際の祠は村人の後悔の念のこもる、
魂を沈めるための祠とは到底思えない禍々しさがあり、
その祠から悪いものが決して出てこないよう、
結界を張るような作りとなっています。

祠の中には燃えるような怒りの形相をたたえた像が鎮座しており、
大渕小僧の怨念がいまもなお感じられるものとなっています。