私の住んでいる地域に昔から囁かれている怖い話です。
県庁所在地から車で30分ほどの私が育った町は、
山と田んぼに囲まれた緑豊かな場所です。一番近いコンビニまで車で45分ほどかかるような田舎なので、
昼間は空の青と自然の緑が鮮やかな一方で
夜は光ひとつない漆黒の闇となります。また、夜になると猪や熊が出没し田畑を荒らしたり、
運悪く遭遇してしまうと襲われる危険もあります。雨の降る日は雨音で
そうした野獣の気配を察することが非常に難しく、
学校や家庭で「雨の日は早く帰ろう」
との教育が徹底されていました。とはいえ、遊びたい盛りの子供はなかなか門限を守りません。
そうして困った親や地域の大人が
子供に聞かせる恐ろしい話が「雨傘女」なのです。町の中心にある広場には、
祭りや地域の会議が行われるトタン屋根のボロ屋があり、
その横には大きな松の木が1本だけあります。ボロ屋は普段使いませんので、
夕方暗くなった無人のボロ屋は
大きな松の木の影に隠れて
じっとりと怪しい雰囲気を醸し出すのです。雨で霞がかかる夕暮れには、
ボロ屋と松の木の間にとっても不気味な影ができ、
松の木の形が投影されて「かさをさす女」の形に見えてきます。親や大人たちは
「雨の夕暮れ、
松の木の下に傘をさした女が出る。その女は傘で顔を隠して
遅くまで遊ぶ悪い子供に近寄ってきて
『傘をさしていても、顔が濡れているの。拭いてくれる?』
と話しかけてくる。話しかけられた子供が顔が
濡れているかどうか確認するために傘の中を覗きこむと、、、、女には首から上がない。
その女は昔夫ににげられ貧困に陥り、
生活苦に耐えきれず子供を殺した後、
松の木で首を吊った町人なのだ。」といった話を子供に聞かせるのです。
それが夜遊びを防止するための
作り話かどうかは分かりませんが、
私の周りの友人の中にも雨の夕暮れに
雨傘女を見かけて追いかけられたという子がおり、
想像するだけでゾッとする怖い話です。


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