ここからこの話は、
わたしが教員の仕事をしていたときの話です。

工業高校に勤めていたのですが、
当時はまだ教員が宿直をする制度がありました。

教師になりたてのわたしは、
初めて一人では学校に泊まり、
見回りや戸締まり確認をすることになったのです。

夕方、先輩方に誘われて、
学校から少し歩いたところにある居酒屋で
夕飯もかねて一杯やることになりました。

先輩方からは、酒のんでひっくり返ってれば、
すぐ朝だ、たとか、女を連れ込むなよ、
など宿直にはためにならない話を聞きながら、
結構お酒の量がすすんでしないました。

飲み会が終わる頃、外は雨が降っておりました。

一人の先輩から、雨の日は出るぞ
と言う話を思い出してしまいましたが、
すっかりいい気分になってしまっていたので、
そんな話もすぐに忘れ、見回りもそこそこに、
宿直室で横になりました。

どれくらい時間がたったのでしょう、
トイレにいきたくなって目が覚めました。

用をたして、再び寝床に着いたのですが、
外の雨は激しさを増しておりました

少し蒸していた事もあり、
雨が入ってこない程度に窓を開けて寝ることにしました。

うつらうつらし始めた頃、
バシャバシャと窓の外を人が歩く音が聞こえました。

半分寝ていたわたしは、
先輩達が傘でも取りに来たのかと思い、
気にもしませんでした。

すると再び、窓の外を歩く音がしました。
歩く音は、一旦止まって、また歩き出します。

何度も繰り返すので、おかしいなと思い始めなした。
そして、気がついたのです、一旦止まる音の位置

そう、窓が少し空いているところ辺りで止まるのです、

つまり、外を歩いている人は、
外からこの部屋を覗いているのではないか
思いました。

すっかり眠りから覚めてしまったのですが、
あまりの恐怖に窓を見ることが出来ずに目を閉じていました。

外は相変わらずな雨です。
しばらくすると、部屋の外を歩く音がしなくなりました。

ホッとしていたときです、
雨の音とは明らかに違う音が聞こえました。

傘、ない?

わたしは、とにかく部屋を出て、
廊下を走り、学校の外へ逃げました。

先ほどまで飲んでいた居酒屋まで走ってきたのですが、
もちろんもう店は閉まっていたのですが、
学校に帰ることも出来ずに、
朝までその居酒屋の軒先で過ごしました。

さっきの声、大人ではなく、子供だったと思いながら、
明け方までの時間の長かった事。

翌日の学校で、雨の日は出るぞ、
と言っていた先生
のところに真っ先に行き、
昨日の話をしました。

その先生は、真剣な顔で、
だから言ったろ、本当なんだよ」と言い、
その先生が、自分が昔聞いた話をしだしました。

その話は、その昔、2人の兄弟が
雨のなか傘をさして学校まで遊にきた
そうなのですが、
遊んでいる途中に雨が止み傘を忘れて
家に帰ってしまった
らしいのです。

家に帰った兄弟は、母親に取りに行くように言われ、
お兄ちゃんが一人で取りに行くことになりました。

辺りはすっかり薄暗くなり、
急いで取りに行ったようですが、
運悪く近くに住む変質者に捕まってしまい、
学校の敷地内で惨殺されてしまった
そうです。

次の日に死体は発見され、犯人も捕まったそうです。

しかし、どうやら雨が降る日は、今だにそのお兄ちゃん、
学校まで傘を探しに来ている
と言うことです。