あれは私が高校生の頃のお話です。
うちは両親が共働きで、
夜も家に帰ってこないことがしょっちゅうでした。
そんな時はよく弟と一緒に
テレビゲームやパソコンをして遅くまで遊びました。
当時、弟はとあるオンラインのネットゲームにはまっており、
よく弟がそのゲームをプレイする様子を見ていました。
オンラインゲームなので色々な人たちと交流があり、
ゲーム内では知り合いが多いようでした。
私はそういうことにあまり興味がなかったので、
関心を持つことはありませんでしたが、
今思えばもう少し弟の言動に
注意しておくべきだったと思います。
その日もやはり両親が家に帰ってこない日だったので、
私たちは遅くまでゲームをしていました。
雨の降る夏の蒸し暑い夜だったのでクーラーをつけていました。
深夜12時を少し回った頃、突然インターフォンがなったのです。
私は一瞬えっと思いました。真っ先に頭に浮かんだのは、
両親が帰ってきたのかということでした。
遅くまでゲームしているのがバレたら叱られると思った私は、
弟にゲームを消すように言い、そっと備え付けの
テレビドアを覗き込みました。
するとそこにいたのは両親ではありませんでした。
雨がしとしと降る中に立っていたのは女の人でした。
年齢は同い年か数歳ほど下だと思います。
コンビニに売っているようなビニールの傘を差して、
白いトップスにベージュのスカートを履いていました。
私が奇妙に思ったのは
その女の人がキャリーケースを引いていたことです。
もしかして、どこかに行く途中で迷ってしまったのだろうか、
でもこんな夜中に若い女の人が
一人で出歩くのも変だなと思いました。
とりあえず出てみようとテレビドアの通話ボタンを押そうとしたら、
急に弟が私の手をがっと掴んで激しく首を振りました。
私はテレビドアの電源を切って、弟にどうしたのと聞きました。
すると弟は私にとんでもないことを言ったのです。
弟が言うにはあの人はオンラインゲームで知り合った人らしいです。
何度かテレビ電話をやったことがあるらしく、顔も覚えているそう。
私は弟にここの住所を教えたのかと問い詰めると、
住所は教えていないけどどの県に住んでいるかや、
最寄りの駅や目印になるものは言ったとのことでした。
私は弟の手を引いてそっと二階に上がり、
そのまま朝まで眠らずに過ごしました。
あの後何度かしつこくインターフォンが鳴っていましたが、
朝になるとあの女の人はいませんでした。
弟にはもうオンラインゲームは止めるよういいました。
それにしてもあの女の人はキャリーケースなど持ってきて
なにをしにきたのでしょうか。
私にとっては恐ろしい体験でした。
コメントを残す