数年前に、祖母の家へ遊びに行ったときのことです。

祖母の家は古い木造の2階建ての家で、
1階は12畳ほどの部屋が2つと祖母の部屋、
8畳の衣装部屋がありました。

祖母は収集癖があったので、狐の剥製や日本人形、
骨董品、古い置物等が多く置かれている
不思議な雰囲気の漂う家でした。

2階には鉄で出来た外階段で上がって行くのですが、
この階段もだいぶ古く、あちこち錆びているので、
のぼるときに少し軋んだような音がします。

階段を上がると左手にドアが2つあり、
手前の部屋は現在は叔父さんが使っていて、
奥の部屋は倉庫として使っていました。

階段から続く右の手すり側にはトタンが張ってある
古いアパートのような外観と、住宅に囲まれているため
昼間でもあまり日が射さない薄暗い廊下、
時折チカチカと点滅する蛍光灯。

ホラー映画に出てきそうな祖母の家は、
昔からあまり好きではありませんでした。

夕食後、1階の寝室で布団へ入って眠っていると、
2階から目覚ましの音が聞こえて目が覚めました。

2階に住む叔父は建築関係の仕事をしていて、
起きるのは早朝。

気がついたら朝の4〜5時頃になってしまったのか?
と時計を見るが、携帯の時刻はまだ2時前でした。

祖母も一緒に遊びにきた父も別の部屋で寝ているようで、
誰も目覚ましの音に気がついていない様子で
ぐっすりと眠っていました。

いずれ叔父さんが起きて止めるだろう。

そう思って布団へ入り直しましたが、
なかなかアラームが止まらない。

むしろ、先程より音が大きくなってきている気さえしてきました。

さすがに気になって眠れなくなってきた私は、
叔父さんの携帯へ電話をしましたが、叔父が電話に出ることはなく、
ずっとコール音が鳴るだけでした。

仕方なく、外階段を上って2階の叔父さんの部屋へ行き
ドアをノックするものの、中からは人の気配はせず、
ずっと目覚ましのアラームが鳴り続けていました

ふとドアノブに手をかけると、鍵は開いていて、
恐る恐る中の様子を伺うと、そこに叔父さんの姿はありませんでした。

叔父さんの部屋は8畳ほどの和室が2つ繋がっているような作りで、
奥に寝室があり、万年床になっている布団の真ん中に、
大音量で鳴り続ける目覚まし時計がぽつんと置いてありました

普通は枕元に置いてあるものかと思うのですが、
この時の私は眠さもあって特に不思議にも思わず、
目覚まし時計を手に取ってアラームを止めるスイッチを押しました。

しかし、何度スイッチを押してもアラームが止まることはなく、
未だ大音量で鳴り続けています

スイッチが壊れているのだろうか?ふと、
目覚まし時計の針を見ると、
ゆっくりと反時計回りに動き始めました

全身から冷や汗が出るのがわかりました。

何度も何度もスイッチを押してそれでもアラームは止まらず、
ぐるぐると速度を増して回る時計の針が余計に私を焦らせました。

電池を抜いて時計を止めよう!
そう思い、裏面の電池のふたを開けた瞬間、
私は一瞬動けなくなりました。

そこにあるはずの電池がない

怖くなった私は、鳴り続ける目覚まし時計を床へ投げつけ
1階の寝室まで走って逃げ込みました。

布団に潜ってからも鳴り続けるアラームが聞こえないように布団に潜り、
気がついたら朝になっていました。

翌朝、父と祖母に昨夜起きたことを話しましたが、
そもそも、叔父さんは目覚まし時計を持っていない」と言われました。

単なる夢だったのか?と、真相を確かめるために3人で2階へ上がると、
昨夜私が床に投げつけたはずの目覚まし時計が、
布団の真ん中にぽつんと置かれていました

目覚まし時計は、知り合いの住職さんに事情を説明して、
引き取ってもらいました。

その後、叔父さんに目覚まし時計を買ったか確認をしましたが、
身に覚えは無いとのことです。