長野県の北アルプスにある有名な山を登った時の話です。

大学時代の登山部の仲間たち6人でパーティーを編成し、雪山登山に挑みました。何度も登頂している山でしたが、その日はあいにくの悪天候で、過去に経験したことがないくらいの猛吹雪の中を進んでいきました。私は、最後尾を歩いていたのですが、視界が悪く数メートル先はほとんど何も見えない状況で、前の仲間たちを信じてついていくしかない状況でした。

そのうち先頭を歩く者から、「ちゃんと全員ついてきているか?」と声をかけられました。

6人全員が「ちゃんといるぞ!」と順番に返事をします。

すると、少し時間をおいてから、先頭を歩く者が、一番後ろを歩く私に対して、「おい、山田(私)!前に何人歩いているか教えてくれ!」と聞いてきます。

私は目の前に見える通り、「大丈夫だ、俺の前には6人ちゃんといるぞ!」と返事をします。

それに対して、先頭の者は無言のまま、足取りをやや早めるように進んでいきます。相変わらず吹雪は続いていましたが、しばらくして、山小屋が見えてきたので、そこで休憩をとることにしました。皆疲れ切った表情でしたが、山小屋に全員無事にたどり着いたことから、安どの表情を浮かべていました。しかしながら、先頭を歩いていた者だけが、何か不安そうな表情をしています。

(私)「おい、大丈夫か?」

(先頭の者)「俺たち6人だけだよな?

(私)「何言ってるんだ、決まってるだろ。ちゃんと途中6人全員返事もしたし、俺の前にもちゃんと6人いたぞ!