Mは、通っている大学までの徒歩で通学しているのですが、その道中には、かつて大企業の社宅として使われていたものの、業界再編の煽りを受けて取り壊し予定となり、今は誰も住んでいないマンションがありました。

そこは飛び降り自殺が多発しており、自殺者の霊の目撃情報も多い曰くつき廃社宅として近所でも有名な場所でした。おまけに周りに街灯も少ないため、夜には廃社宅の築年数が結構経っているせいもあって、かなり不気味な雰囲気を出していました。

本来ならそういう心霊スポットまがいな場所には関わらないMでしたが、初夏のある日、代返と課題を手伝った友人から、その見返りとして、例の廃社宅で夜中に動画を撮ってくるように言われたのです。動画を撮ってこなかったら、今後代返や課題を手伝わないとも言われました。

23時頃になったときガクブルしながらかつての社宅マンションに向かったMは、動画を撮りながら一瞬マンションの屋上に人影が見えた気がしたそうです。

恐怖で心臓止まるかと思ったMがよく見てみると、やはり屋上に誰かが立っていたのです。

まさか噂の幽霊・・・とMが思った瞬間、社宅の屋上から、その人が飛び降りました夜の闇に地面に打ち付けられる嫌な音が響き、女の人が倒れてるのが見えたのでした。

動画を撮るのを止めたMは、慌てて携帯で救急車を呼んでその人に駆け寄ったそうです。 落ちた女性は血まみれで足は変な方向向いていて、幽霊と会った時とは違った、かなりの恐怖を感じていました。

また、Mいわく、落ちた音を聞いてか社宅マンションのベランダから何人かこっちを見ている人がいたようです。

女性はすぐに救急車が搬送していきました。しかし、Mは家に帰っても現場を思い出してしまい、まったく眠りにつくことが出来ませんでした。

Mが次の日聞いたら、女性は重傷だったらしいけど、落ちた場所が芝生だったこともあってか、命の別状はなかったようです。

「ホント未遂に終わってよかった・・・もしあの人が亡くなっていたら、一生トラウマになっていたし、スナッフ動画になるところだった。」と動画を録るよう要求した友人に、事の顛末を語ったMは言いました。

話を聞いていた友人は、腑に落ちない顔をしばらくしていたかと思うと、不意にニヤけたのだそうです。