3数年前から、体力づくりのために近くの公園で早朝、
ウォーキングをする習慣があります。

週に数回、市の公園をぐるぐる回るだけなのですが、
けっこう気持ちの良いものです。

私のように運動をする人、
体操をしている年配の方が多いので、
治安の面では心配はありませんでした。

広い公園なので、歩くコースはよく変えています。

ある時、自分が使う反対側の出口付近に、
古い子どもの遊具コーナーがあるのを初めてみかけました。

ベンチもあって、そこにかなり高齢のおじいさん
座っているのを見かけました。

私がその遊具コーナーを通りかかる時には、
おじいさんは必ずそこにいて、ベンチで静かに座っています。

あ、このおじいさんも朝の散歩が習慣なのね、
そのくらいにしか思わなかったのです。

ある時、いつものようにウォーキングをしていると、
市職員の人たちが数人、特殊な防護服のようなものを
着ているのに出会いました。

そのうちの一人が私に気づき、
「あ、この先今日は立ち入り禁止にするので通らないで下さい。」
と言いました。

「工事ですか?」と私が聞くと、
「去年、たくさんの毛虫が発生して苦情が出たので、
今年は少し早めに防虫剤をまくんですよ。」とのこと。

そうですか、と去りかけて、
「そうだ!そこの遊具コーナー、いつものおじいさん
いるんじゃないかしら?教えてあげて下さい」と言いました。

すると職員さんは首をかしげました。

「…?いえ、誰もいませんでしたけど…」
すると横にいた年配の職員男性が私に語りかけます。

「あ、杖付いたじいさんでしょ。コートみたいなの着てる
私「そうです」

年配職員の方は私に意味深な沈黙をかかげました。

「…あの人はね、大丈夫なんです。私がひよっこだった頃から、
朝はああやってずっと座ってるんですよ。…何かがあの場所にあって、
それで亡くなってからも離れられないんでしょうね。気にしないでやって。」

明るい朝でした。

すべての音が消え去って、
私はしばし、眩暈に似た感覚をおぼえていました。