以前、父から聴いた話です。
私の実家は近くに港があり、
昔から海難事故の多い場所でした。そのためか自宅からすぐ近くに
各家の墓が密集して建っております。子供の頃からお盆や彼岸になると
墓参りのお手伝いをしていたため、
特に墓地が怖いと思うことはありませんでした。ある日、父から話を聞くまでは。
父曰く、「たまに、平日の夜中にお墓に人がいる事がある。それを
見かけても話しかけたり、驚いたり、まして邪魔をしてはいけないよ。」
とのことでした。子供の頃は「そうなんだ。」としか思っていませんでしたが、
年齢を重ねるにつれて疑問が生じてきました。「お盆や、彼岸の墓参りは昼間に
行っているのに、何故平日に墓に行くんだろう?」と。ある日、意を決して父に聞いてみました。
「なぜ、夜に墓参りに行くか知ってる?」と。帰ってきた返事は次のようなものでした。
「夜中にお墓にいる人は、海で亡くなったご先祖様に呼ばれている人で
会話しているんだよ。実際に父さんも呼ばれて夜中に墓に
いったこともあるよ。」詳しく話を聞いたところ、
若いころに「聲」が夜の9時頃に聞こえため、
清酒の一升瓶を持って墓に行き、
一晩墓でご先祖様の声に耳を傾けながら過ごしたとのことでした。父が出鱈目を言っているとは思えませんでした。
酒を嗜んでいたのは事実ですし、
冗談にしては内容が具体的過ぎます。そこで母に「父さんが若いころ墓で一晩過ごしたそうだけど、
その時の事何か知らない?」と聞いてみました。普段は陽気な母ですが、表情は能面のようになり、
返事は帰ってきませんでした。私は「ああ、呼ばれているんだ。」と悟り、
それ以上は何も聞きませんでした。あなたはこの話を信じますか?私は信じます。
私も「聲」に呼ばれて墓に行ったからです。


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