私の高校で体験した出来事です。
その高校は100年ほど前に作られた古くからある場所でした。生徒の噂ではもともと隣に墓地があり、
校舎が広くなる時に埋め立てて
墓地の上に建っているという話でした。新旧の二つ校舎が隣接しているのですが、
そのせいか、新校舎ではよく変なことが起こるのでした。授業中に廊下側から車の音が聞こえたり(道路は窓側)、
センサーで反応するタイプの手洗いが横を通った時に流れ始めたり・・。そして私はその日、
部活で新校舎の一番上の階にある部室にいました。軽音楽部でギターの練習をしていたのですが、
どうもその日は音がよく聞こえませんでした。というのも外の風が強く、
ピューピューという風切り音が調音の邪魔をしていたのです。仕方なく廊下の窓と教室の窓をそれぞれ閉め、
廊下につながっている扉も閉めて練習再開しました。しかし少しして違和感が。
閉めたはずなのに風の音が煩く、
前より大きく聞こえるのです。誰か部員が来て窓を開けたんだろうかと顔を上げた瞬間、
私はギターを抱えたまま動けなくなりました。目の前には窓があるだけ、しかしそこに何かがいるのです。
それのせいで動けないのだと瞬時に悟り、
同時に煩かった音は風ではなく
この目の前の何かの叫び声だとわかりました。もう耳には声しか聞こえず、体はピクリとも動かない。と、
不意にそれがさらに大きな声を上げて突っ込んできました。そして私の体を突き抜けて後ろの窓をすり抜け、
そこで霧散するように消えたイメージが頭に流れ込んできました。途端に身体中から力が抜けて落としそうになったギターを
慌ててスタンドにかけて座り直しました。なんだったのだろう、と良くわかっていないまま後ろを向くと、
窓の近くにあった花瓶の花が静かに風で揺れていました。


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