鹿児島県垂水市海潟の200m沖に小さな島があります。
もとは弁天島といわれていました。

約400年前に関白近衛信輔が荘園巡視の際に、
この場所に立ち寄り、鎌倉の江ノ島に似ていることから
「江ノ島」と呼ばれるようになったそうです。

その「江ノ島」には
「鱶九朗(ふかくろう)」伝説が残っています。

「鱶九朗(ふかくろう)」は
人攫い(ひとさらい)として知られていました
が、
本拠地は四国の宇和島という人もいれば、
瀬戸内海の因島ともいわれていました。

煙草の花が紫の花をつける頃になると、
「鱶九朗(ふかくろう)」は
必ず薩摩にやってきた
のでした。

薩摩は煙草の産地であり、
煙草の木は大人の背丈ほども高く伸びていました。

「鱶九朗(ふかくろう)」は、
子分たちを連れて薩摩にやってきては、
煙草畑に煙草畑の中に忍ばせていた
のでした。

器量がよい娘が通りかかると攫って(さらって)しまう
ある時は12人も娘たちを攫い、夜をまって船に乗せたのです。

その夜は霧の濃い日でとてもではないけれど、
船を進めることができなかったのです。

そんなときに、ひとりの女の人が現れ
弁天島のほうへと誘導したのでした。

弁天島では役人が待ち受け、
人攫いはひとり残らず捕えられた
のでした。

人攫いに捕えられた12人の娘たちは無事に助かったのでした。

12人の娘のひとりが弁天島のお堂を覗いてみると
あの助けてくれた女の人にそっくりな
弁才天の像があった
のでした。

娘たちは、
あの女の人が弁天様だった。自分たちを助けてくれた。」と
島のお堂に手を合わせたそうです。