埼玉県にはいくつかの妖怪伝説があります。

水木しげる先生の『図説 日本妖怪大全』でも紹介されており、
県内の妖怪伝説で最も有名なのは袖引小僧です。

袖引小僧より知名度は低いかもしれませんが、
埼玉県南西部に位置している志木市には、
河童伝説が存在
しています。

志木市は3本の川に囲まれていて、
昔から河童伝説が伝えられています。

江戸期に書かれた「寓意草(ぐういそう)」に
こんなお話があります。

ひくまた川に河童が住んでいて、
人や馬をとったりと悪さをしていました。

近くに宝幢寺(ほうどうじ)というお寺がありました。

ある日、少年が寺の馬を洗うために川に入ったところを
河童に引きずりこまれそうになりました。

馬が驚いて暴れて逃げたのでなんとか助かり、
河童は村人達に捉えられ、焼き殺されそうになりました。

それを見た和尚さんが河童を可哀想に思い、
村人達を説得して助けてあげました。

そして河童に「今後決して人や馬を傷つけるなよ」を言い、
河童はひれ伏しました。河童は川に帰ることが出来ました。

翌朝、河童からのお礼なのか、和尚さんの枕元に鮒が置いてありました。
それ以来河童が悪さをすることは二度とありませんでした。

ひくまた川は、市内を流れている柳瀬川のことでしょう。
この話は、柳田国男の「山島民譚集」でも紹介されています。

志木市にはこの話以外にも河童伝説があります。

その伝説の多さを物語るように、市内には23体の河童像があります。
それぞれに愛称がつけれているほど親しまれています。