猿が溜め込んだ果実が、
自然発酵で酒になったものが猿酒として知られていますが、
霊薬といわれる『猿酒』(えんしゅ)は猿を漬けて作られます。

これはかって秋田県の平鹿郡辺りで知られていた、
霊薬・秘薬と呼ばれた猿酒の話です。

・猿3頭の皮と肉をとり、肝と背肉だけで30日間冷たい水に浸します。
・これを乾燥させた後に酒に漬けたあと、天日でよく乾かします
・塩水と一緒に瓶(かめ)におさめて、フタをして3年寝かせたら完成

お腹の病によく効くとされる猿酒ですが、
家主以外は決して瓶に触れてはならず、
瓶の中を除くと1年以内に死んでしまうと伝えられています。

江戸時代の紀行文によると猿酒には女神が宿っていて、
女神の力が薬効としてあらわれているとされています。

つまり、
瓶の中にいる女神の力が大きく働いて猿酒が作られるので、
他の瓶では猿酒にならず。

女神との対話が許されたのは、
一族の主だけということのようです。

猿酒は高さが56cm、口径は21cm、
容器の一周が117cmと大きな瓶の中にあり、
中の液体を取り出す時の音は金属的な音がして
気味が悪かったといわれています。

後三年の役(1083-1087年)のころ、
島田源助という武士が霊薬・猿酒の入った
瓶を持って山村へ逃げてから、
島田の家は代々猿酒を用いた薬師として生活を送ります。

ある時「死んでもいい」といって
しつこく頼む和尚に瓶の中を見せた所、
本当に1年以内に和尚は死んでしまい
その出来事から島田の家は猿酒を用いた薬師を辞めてしまいます。

こうして猿酒は幻になったのですが、
今でも何処で受け継がれているかもしれません。