佐賀県伊万里市の造り酒屋『松浦一酒造』では、
昭和30年まで使われていた酒造りの道具や農耕器具の隣で、
酒樽を壁に埋め込んで作った祭壇に『河伯のミイラ』を祀っています。

母屋の茅葺屋根を修理をしたときに、
大工が屋根裏の梁にくくられた古い木箱を見つけます。

いつからそこに置かれていたのか誰も分からない、
謎の箱の中には見たこともない生き物のミイラが収められています。

箱をよく見ると『河伯』と書かれていて、
調べて見ると妖怪のカッパを大昔には『河伯』と書いていたことがわかります。

子供くらいの大きさの河伯のミイラは、
這いつくばるような姿勢をしていて、
顔だけをこちらに向けて何かを訴えかけているように見えます。

人間と比べると押しつぶされたように見える頭、
鼻の横にある大きな目は、
まるで飛び出しているようです。

頭には皿を思わせる大きな窪みに、
長いものだと2cmはある毛髪も僅かに残っていて。

手の指は人間と同じ5本指ですが、
足には人間よりも長い指が3本あり、
手と足の指の間は水かきのようになっています。

木箱には河伯のミイラ以外にも、
正徳6年(1716)と書かれた紙が入っていました。

松浦一酒造の創業も正徳6年ごろなので、
酒造りを始めた時期と河伯のミイラを手に入れた時期が重なります。

酒造りに水は欠かすことが出来ない要素なので、
綺麗な水にしか住めない河伯に水を守ってもらうために、
創業者が河伯のミイラを何処かから手に入れたと考えられます。

河伯に守られていたからか何百年も酒造りが続き、
IWCという国際的なコンテストの日本酒部門で
2012年にシルバーメダルを獲得、2013年には日本の全国酒類コンクールで
大吟醸とリキュールが1位を獲得しています。

先祖代々から受け継いだ河伯のミイラは公開されていて、
事前に予約をすると案内までしていただけるようです。