人を化かす動物というと昔話によく出てくる、
タヌキやキツネを想像すると思います。

それでは強い恨みで人を祟る動物と聞かれたときに、
多くの人の頭に思い浮かぶのは猫ではないでしょうか。

昭和に撮影された日本の怪異を取り扱った映画の中に、
鍋島の化け猫を取り上げたものがあり、
猫が人を祟るという話はここから火がついて広まります。

鍋島の化け猫騒動がおきた佐賀県の杵島郡白石町にある秀林寺には、
化け猫を退治した千布本右衛門と、
退治された化け猫を祀った祠があります。

鍋島の化け猫騒動は佐賀藩の藩主・鍋島勝茂と、
囲碁をしていた臣下の龍造寺又七郎が
藩主の機嫌を損ねて殺される事から始まります。

龍造寺の母が飼猫のコマに恨みを残して自害すると、
その血を舐めた猫は7又の尾っぽを持つ化け猫になり、
鍋島勝茂を祟るという物語です。

このとき鍋島勝茂を救ったのが、
槍の名手千布本右衛門なのですが、
死ぬ間際の化け猫に男子に恵まれない呪いをかけられてしまいます。

こうして千布家では跡取りである男子が生まれなくなり、
千布本右衛門が眠る秀林寺に猫の塚をたてて、
猫大明神として祀ることで呪いを沈めたと伝えられています。

実はこの騒動がおきたときは、
豊臣から徳川に権力が移動する時期で。

物語では時の権力者に配慮した配役になっていますが、
龍造寺は豊臣からこの地方を任されていた一族でした。

権力が移り変わったために、
龍造寺はあらぬ疑いをかけられて無念のなかでこの世を去り。

龍造寺の無念を晴らすべく、
飼猫のコマはこの辺りに祟りを撒き散らし、
それを沈める為に化け猫の塚が建てられたとも伝えられています。

鍋島勝茂は80歳まで生きたそうですが、
耳にできた腫瘍が痛み、
この痛みに苦しみながら死んだそうです。

化け猫騒動をおぼえていたものからは、
猫の祟りは静まってはいなかったといわれたそうです。