宮崎作品『天空の城ラピュタ』のクライマックスで、
シータとパズーが滅びの呪文「バルス(閉じよ)」と唱えると、
巨大飛行石は更に上空へ昇っていきます。

バルスは中東で「別れる」「崩壊する」を意味する、
パルスという言葉から来ている。

旧約聖書「ダニエルの書」にある、
バビロンを滅ぼした呪いの言葉「パルシン」
から来ている。

そう言った話がファンの間で語られていますが、
「サルでも描けるまんが教室」で知られる竹熊健太郎さんによると、
諸星大二郎さんの漫画『マッドメン』(1975)が
ネタ元ではないか
ということです。

バルスについては、
どうして危険な言葉がたったの3文字なのか、
滅びの言葉なのにどうして飛行石は上昇するのか。

ファンの間では、
そういったことについて何度も議論されて来ました。

本当は飛行石の回収をするためのコマンドで、
長い間にその意味が間違って伝わってしまったのではないか。

幾つかの考察の中でも、
この意見にはハッとさせられます。

かってラピュタを作った高度な技術を持った文明は、
成層圏で開発をおこなっていて、
ラピュタは実験用の施設のひとつで、
遠隔操作で巨大飛行石を回収するために
バルスというコマンドを設定していた。

高度な文明に忘れられたラピュタの飛行石は、
命令に従って指定された高度に上昇をした。

そんな風にラストシーンを見ると、
天空の彼方に漂う巨大飛行石もすんなりと受け入れられます。

バルスのネタ元と言われた『マッドメン』は、
パプアニューギニアを舞台にしていて、現地の言語ピジン語で、
バルスはハト・飛行機といった飛ぶものを表す言葉で、
『マッドメン』にもそのことを説明するコマが登場します。

滅びの言葉を唱えたのに飛行石は無事なまま
更に上空へ飛んで行くのも意味が通るようになります。

竹熊健太郎さんが宮崎監督にインタビューした時に、
宮崎監督が『マッドメン』を愛読していたことがわかっています。

宮崎作品の『もののけ姫』は
『マッドメン』によく似た雰囲気を持っていて、
『マッドメン』が宮崎監督に影響を与えているのは
間違いありません。

バルスには本来別の意味があって、
いつの間にか滅びの言葉として伝わっていた

この考察が、
宮崎監督の胸に秘められた答えに一番近いのでは無いでしょうか。