明治になったばかりの日本を舞台にした漫画「るろうに剣心」で、
幕末に人斬り抜刀斎と言われていた主人公が使うのが、
刃と峰が逆になった逆刃刀でした。

日本刀が反り返っているのは、
刃の部分と峰の部分に求められる強度の違いから、
鉄が自然とその形になってしまうからで、
逆刃刀は漫画の中だけの刀だと思われて来ました。

ところが、
2013年の10月に江戸後期に牧士(もくし)に
任命された千葉県白井市の旧家で、
明治時代の物と思われる刃と峰が逆になった
逆刃の小刀が発見されます。

 牧士:馬や牛の放牧を任された役目で、苗字帯刀を許されていた

旧家でも今まで忘れられていたので、
逆刃の小刀の由来などは残っていません。

ナタのような実用的な刃物の場合は、
手入れがしやすいように片面だけに刃をつくるのですが、
逆刃の小刀は両面に刃が作られています

なにしろ他に類を見ない刀のために資料がなく、
何のために刃と峰が逆になっているのか
ハッキリとしたことは何もわかりません。

廃刀令で明治時代には刀を持ち歩くのは犯罪になるのですが、
仕込杖よりも安全なものということで「るろうに剣心」では
帯刀をゆるされます。

現実には普通の日本刀と作りが異なる仕込杖などは、
刀剣登録が出来ないので破棄してくださいと言われてしまいます。

この逆刃の小刀も刀剣登録が出来ないために、
文化財としての価値があっても破棄されようとしていました。

江戸後期から明治時代の貴重な資料ということで、
関係各所の協力のもとでこの小刀は逆刃刀として刀剣登録されることになり、
郷土資料館で保管展示されることになります。

こういう珍しい刀剣は刀剣登録が出来ないことから、
人知れず破棄された刀の中には
「るろうに剣心」に登場するような逆刃刀や、
創作物に登場するような変わった刀剣類があったかもしれません。

逆刃の小刀が発見された白石市のサイトでは、
貴重な資料の可能性があるので、
地元の資料館や教育員会等への連絡を呼びかけています。