近年、日本で「選択的夫婦別姓」制度の導入を巡る議論が過熱している。世論調査では賛成派が多数を占める結果が報じられるが、その内訳を詳しく見ると、調査対象や条件が極めて限定的で、国民全体の声を反映しているとは言い難い。そんな中、経団連の強硬な推進姿勢や、中国・韓国との関連を疑う声が、一部で「陰謀説」として囁かれている。果たして、夫婦別姓のゴリ押しは、誰かの意図的なアジェンダなのか?
世論調査の「賛成多数」は本当か?
2024年5月のNHK世論調査では、選択的夫婦別姓に賛成が62%、反対が27%と報じられた。 また、2025年2月の朝日新聞の調査でも賛成63%、反対29%という結果が出ている。 一見、圧倒的な支持があるように見えるが、詳細を掘り下げると疑問符がつく。
たとえば、NHKの調査は3129人を対象に行われたが、回答者は1534人と約半数に留まる。 また、朝日の調査では、賛成派の多くが「選択肢が増えるのは良い」と答えた一方、実際に別姓を希望する人は少数で、特に70歳以上では賛否が拮抗している。 さらに、2024年10月のキャリアデザインセンターの調査では、働く女性426人を対象に65%が賛成と答えたが、半数以上が「自分は同姓を選ぶ」と回答し、積極的な別姓支持は限定的だった。
また、日経新聞などのメディアも同様に独自のアンケートを取っているが、やはり自社の読者限定で回答者数以外の男女や年齢比率は非公開とし、無料で見れる範囲に賛成多数のグラフを表示させ、有料の詳細記事などを読むと実態が乖離していたりと、賛成の印象を強く出したい意図が見て取れる。
これらの調査は、都市部の若い女性や特定の職業層に偏っている可能性が高く、地方や高齢者、男性の声が十分に反映されていない。にもかかわらず、メディアは「賛成多数」を強調し、国民全体の総意であるかのように喧伝している。この「ゴリ押し」の背景に、どんな力が働いているのか?
経団連の異例な推進と「ビジネスリスク」の怪
経団連は2024年6月、選択的夫婦別姓の早期導入を求める提言を初めて発表し、大きな話題を呼んだ。 提言では、夫婦同姓制度が「女性活躍を阻害し、ビジネス上のリスク」と主張。旧姓使用によるトラブル(例:海外でのホテルチェックインやクレジットカード作成の困難)を理由に挙げ、法改正を急ぐよう政府に圧力をかけた。
しかし、この主張には疑問が浮かぶ。2025年3月の自民党会合では、経団連が挙げたトラブルの多くが既に解消済みであると指摘され、経団連の永井浩二副会長が「追い付いていなかった」と釈明する一幕もあった。 たとえば、不動産登記の旧姓併記は2024年4月から可能になり、銀行口座の旧姓名義対応も7割以上の金融機関で進んでいる。 経団連の提言が、実際の状況を過剰に誇張していた可能性は否めない。
さらに、経団連の調査自体が偏っているとの批判もある。提言の根拠となったアンケートは、会員企業の女性役員を対象に行われ、88%が「旧姓使用で不便」と回答したとされるが、具体的なサンプル数や質問内容は不明。 限られたエリート層の声を、企業全体や国民の総意として押し出すのは無理があるのではないだろうか?
中韓との関連を疑う「陰謀説」
一部のX投稿では、夫婦別姓の推進に「中韓の影」があるとする陰謀説が飛び交っている。たとえば、2024年11月の投稿では、「国連の夫婦別姓推奨レポートは中韓のロビー活動によるもので、日本社会の強みを壊すのが目的」と主張。経団連や立憲民主党がその「手先」とされている。 また、2025年4月の投稿では、「経団連に中国企業が含まれており、中国共産党が夫婦別姓を指示している」との声も。
これらの主張は検証が難しいが、背景には中国や韓国の家族制度との比較がある。韓国は「絶対的夫婦別姓」を採用し、結婚後も改姓ができない。 中国も別姓が原則で、歴史的に女性の姓の自由を重視してきた。 一方、日本の夫婦同姓制度は、明治時代に導入された「家制度」に由来し、家族の一体感を重視する文化的背景を持つ。 陰謀説の支持者は、夫婦別姓の推進が「日本の伝統を破壊し、アジアの他国に合わせる動き」だと警戒する。
特に、経団連と中国の経済的つながりが疑念を呼んでいる。経団連は多くのグローバル企業を会員に持ち、中国市場との取引も深い。中国企業が直接的に経団連の意思決定に関与している証拠はないが、経済的利益を優先するあまり、外部の圧力に影響されやすい体質が指摘される。夫婦別姓の提言が、こうした国際的なプレッシャーの一環である可能性は、完全には否定できない。
反対派の懸念:家族の絆と子供への影響
夫婦別姓に反対する声は、家族の一体感や子供への影響を重視する。産経新聞の社説では、「夫婦別姓は家族の呼称をなくし、子供が親と異なる姓になることで分断が生じる」と警告。 NHKの調査でも、反対派の36%が「家族の絆が弱まる」、26%が「子供に好ましくない影響」と答えた。
特に、子供の姓をどうするかは大きな論点だ。夫婦が別姓を選んだ場合、子供はどちらかの姓を継ぐことになり、親子間で姓が異なる状況が生じる。これが「強制的親子別姓」として、子供のアイデンティティや学校生活に影響を与えるのではないかと懸念される。 保守派は、こうした変化が日本の家族観や戸籍制度を根底から揺さぶり、個人主義を過度に助長すると警鐘を鳴らす。
ゴリ押しの目的は何か?
夫婦別姓の「賛成ゴリ押し」が、経団連や中韓の陰謀だとすれば、その目的は何なのか? 一つの仮説は、日本社会の伝統的な家族構造を弱体化させ、グローバル化や個人主義を加速させることだ。経団連にとっては、女性の労働力活用や海外ビジネスでの利便性が表向きの理由かもしれないが、裏では国際的な経済競争や他国の価値観への同調圧力が働いている可能性がある。
また、陰謀説を信じる人々は、夫婦別姓が「戸籍制度の廃止」や「皇室の弱体化」につながる第一歩だと主張する。Xの投稿では、「夫婦別姓の裏に思想的なアジェンダがある」との意見も見られた。 こうした見方は、選択的夫婦別姓が単なる制度改革ではなく、日本社会の根幹を変える動きだと捉える保守層の危機感を反映している。
結論:真相はどこに?
夫婦別姓の賛成ゴリ押しが、経団連と中韓の陰謀であるという説は、確固たる証拠に欠けるものの、議論の偏りや調査の限定的な対象、経団連の強硬な姿勢への疑問から生まれた疑念だ。世論調査の「賛成多数」は、詳細を見ると限定的な声に依拠しており、国民全体の合意とは言い難い。経団連の提言も、ビジネスリスクの誇張や実態との乖離が露呈し、信頼性を揺らがせている。
夫婦別姓は、個人の自由と家族の絆、伝統と多様性のバランスを問う複雑な問題だ。陰謀説は極端かもしれないが、議論の透明性と公平性を確保し、国民全体の声を反映した慎重な検討が求められる。あなたはこの「ゴリ押し」の裏に、何を見るだろうか?
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