起源と背景:ラブブの誕生と韓国の文化輸出

ラブブは、香港出身のデザイナー、カシン・ルンが2015年に創作した「ザ・モンスターズ」シリーズに登場するキャラクターで、2019年に中国のトイメーカー、ポップマートとコラボしてぬいぐるみやキーホルダーとして商品化された。大きな目とギザギザの歯、いたずらっぽい表情が特徴のこのモンスターエルフは、韓国でK-POPアイドルや俳優がSNSで持ち歩く姿が拡散され、急速に人気を集めた。2023年頃から日本でも注目度が上昇。

韓国のエンタメ産業は、K-POPや韓国ドラマを通じてグローバルな文化輸出に成功しており、ラブブもその波に乗る。2025年6月のBBC記事(BBC)では、ポップマートの利益がほぼ3倍に跳ね上がり、中国のソフトパワー戦略の一環としてラブブが世界的なブームを牽引していると報じられている。しかし、ポップマートは具体的な販売数を公開せず、2025年9月の報道では流通量が半年で2.7倍に急増したものの、公式データは不明。この不透明さが、陰謀説の火種となっている。

歴史的に、韓国発のトレンドは日本で急速に広まる。2010年代のK-POPブームや2020年代の韓国コスメがその例だが、ラブブは一般的なティーンや子供層ではなく、特定のサブカルチャーに偏る点が独特だ。また、カシン・ルンは日本のアートシーンとも繋がりを持ち、2022年に村上隆のカイカイキキギャラリーで個展を開催。ラブブの芸術性が高く評価され、ポップマートとのコラボが日本のコレクター層にも影響を与えている。2025年に入り、「呪いのラブブ」なる噂や新商品の即完売が、話題性をさらに煽っている。

現場の声:港区女子と夜職界隈のステータスシンボル

東京の港区や歌舞伎町で働く女性の間で、ラブブは異様な人気を誇る。あるキャバクラ嬢は、「本物のラブブは高価だから、お客さんからのプレゼントでステータスを感じる」と語る。一方、別の女性は「偽物でも見た目が良ければ十分」と安価なコピー品を愛用。Xでは、ラブブをバッグにつけた写真が頻繁に投稿され、夜職界隈の「見せる」文化が流行を加速させている。

一般のティーンや子供層では、ラブブの浸透が少ない。ある高校生は、「ポケモンやちいかわの方が魅力的」と話し、価格の高さとシンプルなデザインが若年層に響かない理由とされる。2025年8月のX投稿では、「子供が興味ないのに港区で流行るのはなぜ?」との疑問が散見された。

渋谷の雑貨店では、「本物」とされるラブブが数万円で販売されるが、購入者は20代後半の女性が中心。店員の「証明書で本物か判断してください」との曖昧な対応は、偽物疑惑を増幅させている。

地域の反応:港区と歌舞伎町の特異な流行

港区や歌舞伎町では、ラブブがステータスシンボルとして機能する。Xの投稿で、「ラブブ持ってる子は金持ちのお客さんがいる証」との声が上がる一方、地方の商店街や郊外ではラブブを日常的に見かけることはほぼない。2025年の推定では、港区のクラブやバーでのラブブ所有率が他の地域の10倍以上とされるが、公式データは存在しない。

港区や歌舞伎町では、ラブブがステータスシンボルとして機能する。Xの投稿で、「ラブブ持ってる子は金持ちのお客さんがいる証」との声が上がる一方、地方の商店街や郊外ではラブブを日常的に見かけることはほぼない。2025年の推定では、港区のクラブやバーでのラブブ所有率が他の地域の10倍以上とされるが、公式データは存在しない。

地方の学生や主婦層からは、「ラブブって何?」との反応が多く、都市部と地方の温度差が顕著。この地域差は、流行が人工的に作られたとの疑念を強めている。Xでは、「都会で流行らなくなったら地方は興味を失う」との意見も。

2025年9月に発売されたアルファベットモチーフの単品やアソートボックス、カラフルなラブブぬいぐるみが、わずか1~2時間で予定個数の販売を終了。8月上旬の「Big into Energy」シリーズ(筆者も実際の加熱度を体感すべく、7月末と8月初旬に購入を試み、成功したが)のネット予約販売と比べ、さらに短時間での完売が話題性を高めている。

陰謀説:インフルエンサー、転売、呪いの話題作り

ラブブの人気を巡る陰謀説の一つは、韓国企業による意図的なマーケティングだ。Xでは、「K-POPアイドルが持ち始めた途端に日本でバズった。裏で仕掛けてる」との憶測が飛び交う。BLACKPINKのリサやリアーナがSNSでラブブを愛用する姿を公開し、2024年以降、世界的ブームが加速した。BBCの報道では、リサのルイ・ヴィトンに取り付けられたラブブがブームの火付け役とされ、ファンの熱狂が過熱している。

販売数の不透明さも疑惑の火種。2025年9月の報道では、ポップマートの売上高が63億元(約8億7,000万ドル)に達したが、具体的な販売数は非公開。鑑定士は「本物と偽物の見分けが困難」と指摘し、偽物市場の拡大が希少性を演出する戦略の一環との見方もある。

新たな陰謀説として、「呪いのラブブ」なる噂が2025年初頭に浮上。一部のX投稿で、「ラブブを持つと不運が訪れる」との話が広まったが、根拠は乏しく、定期的な話題作りとの指摘が強い。こうした噂は、新商品の発売タイミングと連動し、注目度を維持する戦略とされる。

SNSでは、POP MARTの抽選や購入報告より、転売関連の投稿(メルカリやヤフオクへの誘導)が圧倒的に多い。Xで「譲渡」「買取」のワードが目立ち、転売ヤーの在庫過多や価格下落の嘆きも見られる。この偏りは、希少性を煽るマーケティングの裏側を露呈している。

現代の象徴性:ステータスと偽物の曖昧な境界

ラブブの人気は、SNS主導の消費文化を象徴する。インフルエンサーが持ち上げることで価値が生まれ、デザインより「誰が持っているか」が重視される。Xの投稿では、「ラブブは可愛いんじゃなく、持ってる人が有名だから欲しい」との声が多数。

偽物の流通もこの象徴性を揺さぶる。本物のラブブには証明書が付属するが、偽物は数百円で購入可能。鑑定士によると、偽物の精巧さが向上し、判別が困難に。タイでは偽物が堂々と販売され、クレーンゲームの景品にも偽物が混在する。BBCでは、この偽物市場がラブブのグローバルな人気をさらに複雑化させていると分析されている。

2025年9月に発売されたアルファベットモチーフやカラフルなラブブぬいぐるみは、即完売でさらなる露出を獲得。こうした急速な販売終了は、注目度の高さを示すが、実際の人気はステータスゲームに支えられている可能性が高い。

影響と波紋:分断と消費の虚実

ラブブの流行は、社会的分断を浮き彫りにする。港区や歌舞伎町では「成功者の証」としてラブブが持ち上げられるが、地方では「高価なぬいぐるみ」に過ぎないとの冷めた声。Xでは、「金持ちアピールのための道具」との批判も。

偽物の氾濫はブランド価値を損なう一方、流行を拡大。2025年8月のX投稿では、偽物のラブブを「盗聴器が入ってる」と冗談で解体した投稿が8万回以上拡散されたが、中身はプラスチックだった。この騒動は、ラブブへの不信感と好奇心の混在を示す。

経済的影響は大きく、偽物市場を含めたラブブ市場は数十億円規模と推測される。しかし、ティーンや子供層への浸透が少なく、長期的な流行は不透明だ。カイカイキキとの繋がりが日本のアート市場に与える影響も、今後の動向として注目されている。

未来への問いかけ:本物の流行か、仕組まれた熱狂か

ラブブの人気は、インフルエンサー文化と韓国のマーケティングの産物か、それとも本物のトレンドか。販売数の不透明さ、偽物の氾濫、「呪いのラブブ」といった話題作り、転売投稿の多さは、消費者の信頼を揺さぶる。港区や夜職界隈での熱狂は、一過性のステータスゲームか、新たな文化の兆しか。

アルファベットモチーフやカラフルぬいぐるみの即完売が示す注目度は高いが、その裏にどんな意図が隠れているのか。BBCが報じる世界的ブームやカイカイキキとの芸術的結びつきが、日本の消費文化にどんな影響を与えるのか、その答えはSNSの光と影の中に潜んでいるのかもしれない。