私がまだ中学生のころの話です。
当時、私が通っていた中学校では「怖い話」や
「心霊写真」などの話が流行っていました。そんな中でみんなの話の中によく出てくるようになったのが
「こっくりさん」でした。よく放課後に、教室の片隅で数人が集まって
「こっくりさん」をしていることがありました。次の日には「十円玉が動いた」とか「あれは誰かが動かしていた」
と言った話や「来ているものの正体を聞くと祟られる」と言ったような、
ほんとかウソかよくわからない話で盛り上がっていました。そんな中、野外活動でキャンプへ行くことになりました。
私も「怖い話」を仕入れてみんなの前で話がしたくなり、
本屋で見つけた「こっくりさんの秘密」という本を
持っていくことにしました。その本には「こっくりさんの呼び方」や「帰ってもらい方」などとともに、
「こっくりさんをした時にこんな怖い目に会った」と言う話が
たくさん書かれていました。また、本には「こっくりさん」ができるように五十音や
「はい」「いいえ」などが書かれ、
真ん中には鳥居が書かれている紙まで入っていました。まだ半信半疑だった私は、キャンプへ行く前に家の居間で
一度興味半分でその紙を広げ、鳥居の中に10円玉を置き、
人差し指でその効果をそっと押さえて「こっくりさんおいでください」
と言ってみたのです。そして何も変化がないのを見て「やっぱり動かないのか」
と言って指を硬貨から放した時でした。急に突風が吹き、庭の木々が思いっきり揺れて、
縁側のガラス窓が外れそうになるくらいガタガタと揺れ始めました。そして、当時家の中で飼っていた犬が、
その硝子戸の向こうに向かって狂ったように吠え続けたのです。その風は、しばらくすると止んでしまい、
何もなかったようなしーんとした時間が戻ってきました。しかし母によるとその時の私の顔は、
血の気が引いたように真っ青だったそうです。何も見えませんでした。
偶然の風だったのかもしれません。でも犬が狂ったように外に向かって吠えていたことを考えると、
今でも「なにか」がそこに来ていたと思えてならないのです。それ以降「こっくりさん」に手を出すことは怖くなってやめてしまいました。


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