新居の押入れを開けようとした彼は、取っ手が動かないのに気づいた。隙間から冷たい風が吹き、かすかに息づかいが聞こえる。夜になると、押入れからトントンと音が響き、隙間に白い目が浮かんだ。翌朝、押入れに鍵をかけたが、夜に音が続き、鍵が軋む。ある晩、押入れが勝手に開き、中から黒い手が這い出てきた。彼は悲鳴を上げて逃げたが、次の朝、押入れは閉まり、隙間に血の染みが滲んでいた。

友人に話すと、「その押入れ、昔、閉じ込められた人がいたって噂があったよ」と言われた。彼は今、押入れに近づかないが、背後に音が響く。