母の友人のAさんは、
他の人よりもちょっとだけ霊感が強いそうで、
心霊スポットの近くに行くと肩が重くなったり、
いつの間にか腕に手形がついていたりするそうです。

これは、そんなAさんが、まだ学生だった頃の怖い話です。
当時のAさんは両親といっしょにアパートに住んでいました。

共用の通路があって、その通路の両側に部屋があるタイプの
アパート
だったそうです。

Aさんは両親が寝静まったあとも、
自室で一人本を読んでいました。

枕元の間接照明だけを点けて、
布団にあおむけで寝転がっていたそうです。

そしていつの間にか、本を読みながら寝てしまいました。
何時間かたったころ、Aさんは寝苦しさを感じて目を覚ましました。

身体を動かそうとしましたが、
誰かに上から押さえつけられているように、手も足も動きません。

Aさんはたまに金縛りに遭っていたので、
このときも「ああ、またか…」とちょっとウンザリしていたそうです。

いつもは数分目を閉じていれば金縛りはおさまるのですが、
このときはなぜかおさまりません。

Aさんは不思議に思い、何とか動く頭を持ち上げて、
自分の足元を見てみました。

そこでAさんが目にしたのは、
足元の壁から無数に飛び出た人間の腕

それらはゆらゆらと動きながら、
なぜか同じ方向を指さしていました。

Aさんはそのまま失神してしまい、
翌朝、あわてて両親のいるリビングへ駆け込みました。

そして両親から、昨夜アパートの向かいの部屋の住民が
自殺した
と聞いたのです。

その部屋がある方向は、
まさに壁から飛び出た腕たちが指さしている方
でした…。

それからすぐ、Aさん一家は引越してしまったそうですが、
Aさんはいまだに「何かが自殺のことを教えてくれたのかもね」
と話しています。