これは私の年上の元彼から聞いた怖い話です。
大学1年生の夏休み、海にキャンプ、
BBQなどイベントだらけでした。あるとき、きれいな川の近くで
BBQをやることになったので彼に伝えました。「川がどんなにきれいでも、
もし崖とかあっても絶対に飛び込んじゃダメだよ」私は「女の子はそんなことしないよ」と答えると
「男の子もダメだよ」と言うのです。回りの男の子たちの心配まですることなんて初めてでした。
彼はゆっくりと話し始めました。これは彼の友達が実際に体験した話だそうです。
大学のときに仲間内5人で8月中旬のうだるような暑さの中、
男5人でBBQ。近くには流れのゆるやかな小さい川があった。「ちょっとあの川で涼んでくる」一人がそういうと、
「おれも!」と声が上がり、2人が川に向かった。しばらくすると戻ってきてこう言った。
「少し離れたところに、深そうなとこがあった!」
「飛び込めそうな崖みたいなのもあったから、
あとでみんなで行こう」10代の男たちには絶好の遊びだった。
貴重品を車に積み、5人全員でそこへ向かった。3メートル程度の高さの崖、きれいな水面は透き通っていた。
それを見て、一人がこう提案した。彼をAくんとしよう。「この夏の思い出作ろうぜ。」
「一人ずつ、あの崖からここに飛び込もう。」「それでその瞬間を写真に撮らないか?」
Aくんの提案にみんなは大賛成だった。A「俺カメラ持ってきてるから、車まで取りに行ってくる!」
Aくんが車に戻っている間、最初に飛び込むことになった人は
崖を登ってスタンバイしていた。「そんなに高くないけど、いい感じに飛び込めるかな?」
彼らはこれから作る思い出にワクワクしていた。「いくぞー!」1人目が飛び込んだ。
勢いよく飛び込んだがなかなか上がってこない。全員が良くない想像が頭をよぎった瞬間、顔を出した。
「ビビらせんなよー!」飛び込んだ人は
「意外と深いからビビった!」と言った。1人、また1人と飛び込んでいく。
その間Aくんはずっと撮影係をやっていた。4人が飛び込み、Aくんの番が回ってきた。
「いい写真撮ってくれよ!」言いだしっぺということもあり、
意気込みは十分。崖に上がり、大きく手を振るAくん。
勢いよく助走をつけて飛び込んだ。なかなか上がってこないが、
もう5回目ともなると皆そこまで不安にならなかった。1分、3分、5分経ってもAくんの姿が見えない。
お調子者のAくんだから、
実はもうとっくに上がってBBQ場に先回りしているんじゃ?
と思ったがAくんはいなかった。車にも、トイレにもいなかった。
心配になり、もう一度崖に戻ってAくんを探した。いくら日が長いと言っても19時を回ればあたりは真っ暗になる。
暗くなっては捜索もできないし、もしかしたら家に帰ってるのでは?
という期待を胸に、帰宅することにした。Aくんの家を訪ねたが、Aくんは帰っていなかった。
親御さんに事情を説明し、捜索願を出すことになった。新学期が始まってもAくんは戻ってくることはなかった。
さまざまな手続きを踏み、遺体のない葬式をあげることとなった。4人はまだ信じられなかった。
ひょっこり現れてくれるんじゃないかと期待していたからだ。BBQの1件から微妙な距離を置いていた4人は
久しぶりに顔を合わせた。「そういえば、あの時の写真まだ現像してないよな?」
そのことに気付いた4人は、
式が終わるとすぐにカメラを現像に出した。そして、4人全員で出来上がった写真を受け取りに行った。
カメラ屋の店主は中身を確認し、こう言った。「本当にこの写真が欲しいか?」
「当たり前だろ、最後の思い出なんだ」店主はしぶしぶ写真を手渡した。
前半は楽しそうなBBQの風景。1人目の飛び込み、2人目、3人目、4人目。
Aくんは絶妙なタイミングでシャッターを切っていて、
写真のセンスを感じられた。最後の1枚、Aくんの飛び込み…Aくんの最後の姿を収めた写真。
それを見て、誰も何も言えなくなった。言わないというより、声が出なかった、
のほうが正しいかもしれない。Aくんの表情は引きつり、恐怖に満ち溢れていた。
それだけではない。水面からは無数の赤い手が…
まるでAくんをあちら側に引き込むかのように。「うわあああああああ」1人が逃げ出しそうになったが、
腕をつかまれ引きとめられた。「俺らより怖い思いしたんだよ、最高の思い出になる瞬間だったのに。」
4人でその写真をお寺でお払いしてもらった。お坊さんには「もう、忘れなさい。あなたたちは運がよかっただけ。」
と言われたそう。いまでもAくんの遺体は見つかっていません。
毎年命日には現場にお花を持って行っていたそうですが、
近年では立ち入り禁止になってしまったそうです。他にもこのようなことがあったのでしょうか。
友達の話、といっていましたが
実は彼が体験したことなんじゃないかと思っています。


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