いまとなっては不審人物として相手にされることはなくなり、
はたまた警察沙汰になるかもしれないがその昔、
「ラッキーおじさん」という人がいた。
誰が名付けたのかは不明であるが、
小学生たちからはそう呼ばれていたのだ。
学校帰りに児童に声をかけてはおじさんのうちに呼び、
お菓子屋ゲームをさせて遊ばせてくれるという。
ラッキーおじさんの家は誰にもいってはいけないと
児童は何度もきかされていたという。
それというのも、お菓子もくれるしゲームもさせてくれるから
児童がたくさん集まりすぎるからというものだ。
だから、おじさんに誘われたときでなくちゃ
おじさんの家に遊びにいってはいけないと
子ども達はそのルールを守っていたという。
しかし、ある日ひとりの女の子がそれをやぶった。
なにせその子は友だちもおらず学校でいじめられていたから
ラッキーおじさんと遊ぶことがひとつの楽しみだったし
逃げ場でもあったらしいのだ。
その子がラッキーおじさんと連れ添って歩いていてるのを
何人かの児童がみていたらしい。
ある国道沿いの並木道を手をつないで歩いていたという。
それからぱったりと、その女の子は学校に姿をみせなくなった。
ラッキーおじさんに誘拐されたのではないかという噂がたつも、
ラッキーおじさんの家にはもう誰もいなかったそうな。
ラッキーおじさんはいまもその女の子と
日本のどこかを漂流しているのだろうか。
知らないおじさんと遊ぶもんじゃない。
ああやはり、世知辛い。
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