山梨県富士山(青木ヶ原)の樹海の怪談
もはやあまりにも有名だろう。

怪談というより、事実に近いのかもしれない。
なにしろ死ぬためにそこに行く自殺者があまりに多いからだ。

樹海に一歩踏み入れると、方位磁石が効かないことにまず気づく。
森の中深くに迷い込むと、足元には毒蛇、害虫がうようよしている。

さらに、その中には人骨が沢山紛れている。
これは自殺者の骨だ。頭蓋骨は普通に転がっている。

森の中は暗くてひんやりしている。
空気もなぜか薄く感じ、息が苦しくなる。

森の奥には、白い服を着た人が沢山うごめいている。
もはや、隠れるようすもなく、ここは自分たちのテリトリー、
といわんばかりにうようよいる。

森へ来る人は大抵が車だが、車を降りて歩いているうちに、
怖くなりひきかえしてくる。

そのときにはもう遅い。
車のガラスや車体には、小さな子どもの手跡
びっしりついているはずだ。

そして、座席には長くて黒い女の髪の毛ご敷き詰められている。

さらに、逃げ出そうとしてエンジンをかけてもおそらくかからない。
もたもたしているうち、森の奥にいた白い人々が、
ゆっくりとちかづいてくるのだ。

恐怖で頭が真っ白になった運転手は、
無理矢理になんとかエンジンをかけ、命からがら逃げ出す。

しかし車が発車した瞬間に、
フロントガラスに死体が目を開けたまま張り付き、
行く手を阻まれるだろう。

ふと後ろをみると、後部座席にはさっきまでいなかった
フードをかぶった男が座っている。
運転手は耐えきれずに悲鳴をあげ、気絶する。

そのまま発作で亡くなった人、あまりの恐怖で運転を誤り、
崖から転落した人、運良く朝まで気絶し続け、
目覚めることができた人と、樹海へ行った人の運命は、
さまざまであるようだ。