あるところに、容姿が美しい夫婦がいました。
二人の間には子供が生まれましたが、
子供はなぜか夫婦のどちらにも似ておらず、
どちらかというと醜悪な容姿をしていました。夫婦はどうしても自分たちの子供が
美しくないことを受け入れられず、
五歳くらいになるまでなんとか育てたのですが、
子供に対して愛情を感じることができませんでした。そんなある日、夫婦は子供を連れて、
大きな公園に遊びにでかけました。公園には大きな大きな池があり、
手漕ぎのボートがありました。夫婦は子供と一緒にボートに乗りました。
大きな池の真ん中あたりまできたとき、
子供はボートの端から池の中をのぞきこんで、
魚をさがしてはしゃいでいました。そのとき、夫婦の間にある考えが浮かびました。
もし子供が池に落ちて溺れてしまえば、
もうこの子を育てなくてもよくなる・・・。あたりには幸い人もおらず、
池には3人のボートが浮かんでいるだけです。夫婦は、互いに目で合図をし、
ふたりで子供の背中を思い切り押しました。子供は大きな水音をたてて池に落ち、
びっくりした顔をして水面でもがいていましたが、
夫婦は助けることなく黙って見ていました。やがて、子供は動かなくなり死んでしまいました。
それから数年後、夫婦の間には
また新しい子供が生まれました。今度は二人に似て、
それはそれは美しい愛らしい子供でした。二人は愛情いっぱいにその子を育てました。
子供が五歳になったある日のことです。「お父さんお母さん、公園に行きたい」
その子は言いました。二人はあの公園には行きたくありませんでしたが、
子供がどうしても行きたいというので出かけることにしました。公園につくと、子供は
「ボートに乗りたい」
と言い出しました。二人は強く反対しましたが、子供はどうしてもと言い張り、
結局ボートに乗せることになりました。そうして、池の真ん中まで来たとき、
子供はボートから体を乗り出して、
魚を見たいと言い出したのです。二人が心配しながら見守っていると、
ボートの端から身を乗り出しながら、
その子は振り返って言いました。「今度は落とさないでね」


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