これは義父の初盆の時のお話です。

主人の両親は義父の酒グセの悪さが原因で
主人が小学生の時に離婚
しました。

それから義母の女手ひとつで育てられた主人は、
家族が苦労させられた経験からか義父を嫌い、
自分の結婚式にも呼びませんでした

主人と私の間に娘が生まれた際には
義母から

義父が孫に会いたがっているから、
できるなら会ってやってくれないか」

と頼まれましたが、
今はお酒もやめて真面目にやっているという
義父の現状を聞いても、主人は義父を
娘に会わせることを認めることはありませんでした

その後、娘が2歳になってすぐ、
義父は若い頃からのお酒が祟ってこの世を去りました
が、
主人はお通夜にもお葬式にも出ることはなく、
その年のお盆を迎えました

毎年お盆は義母の家に親戚一同が集まって
ご先祖様のお仏壇とお墓にお参りすることになっており、
私たち夫婦も娘を連れて出かけ、
お昼をごちそうになった後で皆で墓地に向かいました。

無事お墓参りを終えたところで、
義母が言いにくそうに

これから少し離れた別の墓地にある
義父の入っているお墓に参りに行くから、
あなたたちも一緒に行ってくれないか

と私たち夫婦に頼みましたが、
主人はそれを聞くと顔をしかめ、

もう娘の昼寝の時間だから帰る

と不機嫌そうに断って
さっさと車に乗り込んでしまいました。

そして帰宅後、
家族3人で川の字になって昼寝をしていると、
突然玄関のチャイムが鳴りました

ところが「出なければ」と思うのに、
私の体は指一本動かすことができません

金縛りだ!」と思い怖くなった私は、
反射的に娘を挟んだ隣で寝ている主人の方を
辛うじて動く目で見ました。

すると、主人も同じように首を動かすことなく
目だけで私を見ている
ではありませんか。

すると、それまでぐっすり眠っていたはずの娘が
目を覚まし、「ジージ!きた!」と叫んで
ひとりで玄関へ走って行ってしまいました

私は動けないまま心臓が凍る思いをしましたが、

「鍵がかかっているし、
あの子はまだ開けられないから大丈夫!」

と自分に言い聞かせてなんとか平静を保ちました。

案の定玄関のドアが開閉する音や気配はせず
娘が無事戻ってきた時は心底ほっとして、
同時にふっと金縛りがとけましたが、
次の瞬間、娘が手にひとつの桃を持っているを見て

「えっ」と叫んでしまいました。

私と同様金縛りから解放された主人
それどうしたの?」と聞くと、
ジージ!モモ!」と嬉しそうにしていました。

すぐに私の父に電話しましたが知らないと言われ、
まさかそんなことは…と思いながらも
義母に電話をかけてこの事を話すと、

それきっと義父よ。お墓に桃を供えたもの。
死んでからあなたたちをずっと待って、
今日こそ孫に会えると思っていたのに会えなくて、
とうとう行っちゃった
のね」

と涙声で言われました。

それを聞いた私は怖い思いをしたけれど
義父のことがいよいよ気の毒になり、
これにはさすがの主人も同じ思いだったのか、
お盆が終わって義父があの世に帰ってしまう前にと、
翌日家族3人で義父のお墓参りに行きました