「お盆に海や山に行ってはいけない」という、
言い伝えやしきたり、それにまつわる怪談は、
少なくありません。
これは友人Aから聞いた話です。
Aの家では、
「お盆の3日間や彼岸に山に行ってはいけない。
特に町内の山には絶対に登るな」
という家訓というかしきたりが存在しており、
Aは祖父母や父がうるさく言うこともあって、
中学校までは、盆や彼岸の期間はお寺か墓参り、
仏壇参り位しかしてはいけないものと思っていたようです。
因みにお盆や彼岸期間に部活や夏季講習で
学校などに行く際もお守りを絶対に持つように
口を酸っぱくして言われてもいたとか。
とはいえ、Aも高校時代には、
そのしきたりを時代遅れな言い伝えと
内心思っていたこともあり、
高校時代のある7月15日にBとC子、D子、F、Gら
高校時代の友人らとともに町内の山の近くにある
キャンプ場でのキャンプに参加しました。
キャンプに行ったことがバレると
祖父母や父に激怒されると思ったAは、
友人らと口裏を合わせてもらったうえで、
友人の家に一泊すると母に告げて
マウンテンバイクで家を出ました。
ついでに言うといつもの習慣で
お守りは持っていったとか。
お盆期間中では初となる
友人らとのキャンプは楽しいもので、
日中はキャンプ場近くにある
川での釣りなどを楽しみました。
気になったことといえば、
釣りではありがちながら、
釣りの最中に髪の毛のような藻を
釣り上げてしまったこと位だったとか。
日が暮れてからバーベキューをやったあと、
日中に予定していた通り、
夜のキャンプで定番の肝試しをすることになりました。
内容は2人組でキャンプ場から登山道を通って
山中にある神社に行き、
そこにあらかじめ置いてある
紙の札を持ってくるという内容でした。
くじ引きの結果、BとG、D子とF、
AとC子と組むことになり、
AとC子は一番最後に出発することになりました。
先に行っていたBとG、D子とFは何事もなく
キャンプ場に戻ってきていたので、
Aも何事もなく終わるし、
やっぱり、お盆に山に行ってはいけないというのは、
迷信だったともと思っていたそうです。
結果から言ってしまえば、
AとC子は目的地の神社に着くことがありませんでした。
夜の山は不気味で空気もひんやりとしていましたが、
神社まであと少しという地点で
急に空気が変わったように感じたとともに
強烈に生臭い臭いが漂ってきたのだとか。
C子も「ヤダ、臭くない?。なに、この臭い」
と言っていたそうでどうも気のせいではない
とAは思ったようです。
Aがこのまま神社に行くかどうか迷っていると、
不意にC子が
「・・・・熊?」
と言いながら、神社が見える方向、
おそらくは悪臭のする方を指さしていました。
そちらに目を向けると、
月明かりの中、神社の鳥居の前に熊ほどの
大きさの毛深い獣が座っているのが目に入ったそうです。
この山に熊が出るというニュースも話も
今まで一度も聞いたことがなかっただけに驚いたAですが、
その獣の眼光がこちらを見て明らかに嗤っているのを見て、
驚きより血の気が引くのが勝ったのだとか。
獣が立ち上がってこちらに来ると思ったAは
C子を連れて一目散に登山道を駆け下りて行き、
友人らがいるキャンプ場に戻ったそうです。
キャンプ場に戻ってからのAの記憶は急に途切れ、
次に気づいた時には、病院だったそうです。
意識が戻ってから、両親や祖母に激怒された後に
祖父から教えてもらった話によると、
キャンプ場で高熱を出して失神したらしく、
友人からの連絡でキャンプ場に迎えに来た
両親によって1週間近く入院していたそうです。
ついでに、熊狩りが行われたようですが、
熊が見つかることはなかったようです。
「なんでお盆と彼岸に山に行っちゃいかんのか
教えてなかった俺が悪かったかもな・・・」
とつぶやいたのを皮切りに、
祖父は「しきたり」の理由と
あの獣が何かについて話してくれた末に、
こう締めくくったのだそうです。
「アイツはお盆と彼岸の時期に
山で俺たちの一族を待ってるんだよ。復讐するために」
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