ウチの実家、関東の地方都市の端っこっていう
そこそこ田舎、そこそこ都会、みたいなとこにあるんだけど、
その家の真ん前の道路脇に、小さなお堂? というか、
祠みたいなものがあった。全高は三十センチくらい。屋根があって、
観音開きの扉があって、前にお供えをする台がある。中は見たことないけど、多分小さな仏像だか
お地蔵様だかが入ってそうな感じ。これで周囲が田んぼやらあぜ道やらだったら
それっぽいなんだけど、地面はコンクリ、
周囲は普通に住宅だしで、ちょっと浮いてる感じだった。で、その祠、ウチと道路を挟んだ向かいにあるんだけど、
この道路でやたら人が転ぶ。気をつけててなお転ぶ、ってほどではないんだけど、
子供やらご老人やらがうっかり何も考えず通るとほぼ転ぶ。別に舗装が割れてたり砂利道だったりするわけでもなく、
理由もわからなくて不気味だってんで地元じゃちょっと有名だった。で、ここまでが前置き。
まあそんな感じでウチの実家、
ちょっとしたホラースポットだったんだけど、
別に明確な害があるわけでもないから放っておかれてたのね。気をつけてれば転ばないし、というか原因も解んないし。
だけどある日、死人が出た。
被害者は近所に住んでたお爺さん。90歳超えてなお一人暮らしだし毎日散歩してるしで
元気だったんだけど、ある朝ウチの前で頭打って血を流して倒れてた。まあ、これ自体は不幸な事故、ていうのが周囲の見解。
それはそうだよね、怪談のせいで人死にが出ましたとか、
祠の呪いだとか、そんなの言い出したら普通にヤバい人だし。でも、そのお爺さんが一人で住んでた家に、
お爺さんの親族からウチの親が呼び出しを受けた。なんでも見てほしいものがある、って。
結論だけ言うけど、そのお爺さんの家、
今時珍しく玄関が引き戸だし道路沿いに縁側あるしな
古風な家だったんだけど、その奥まった一室から、写真が出てきた。ウチの実家を外から撮った写真だった。
外観をいくつもの角度から撮ったヤツが、尋常じゃない数。ちゃんと数えはしなかったらしいけど、
恐らく一万は超えてた、って。ウチの家族の誰も、
お爺さんがどうしてそんなことしてたのかは解らない。別に恨みを買った覚えもないし、
道で会えば普通に挨拶もしてたしで。で、もう一つ。お爺さんの親族から、
確認してほしいことがある、って言われた。お爺さん、鍵持ってた。彼が暮らしてた家の鍵じゃない。
明らかにサイズも様式も違う、近所の鍵屋の刻印が入った真新しい鍵。ウチの鍵だった。
結局、お爺さんの家からはウチの写真以外特に変わったものは
出てこなかったらしくて、真相は全部闇の中。一つ疑問なのは、あのお爺さん。
どうして夜中にウチの前通りかかったりしたんだろうか、って。


コメントを残す