私がギフトショップに勤めていた時の話です。

店舗自体が古く、近くに葬儀場などがあるため入社した頃から「この店には幽霊が出る」という話を何度も耳にしました。特に目撃情報が多いのはショップの在庫を置く地下室で、一人で検品作業をしていると誰かの話し声が聞こえるとか、視線を感じるといったものでした。

しかし主に事務所での発注業務などを行っていた私は地下室に行く機会がなく、霊感もないため話半分に聞いていました。考えが変わったのは努め始めて2年が過ぎ、冬の寒い日のことです。

業績の悪化から閑散期から数ヶ月は一部のパート従業員さんは出勤しないことになり、私も現場の仕事を行うことになりました。その日は入荷したタオルを地下室に運んで検品する作業でした。

階段を使わなければいけないので荷降ろしが大変で、慣れない検品作業にも時間を取られて私は数時間一人きりで地下室にいました。人が少ないせいかほとんど物音もせず、ビニール袋やタオルが擦れるガサガサとした音だけが響きます。

霊感がない私なら幽霊には会わないと思いつつも、誰かの話声が聞こえてきたらどうしよう…と不安になります。誰かの視線を感じたような気がして、何度か振り返ってしまうこともありました。当然、誰もいませんでしたが。

作業に必死になっていくうちにそんなことも忘れて、すべて片付けた頃にはすっかり怖さも薄れていました。その日の仕事は終わりです。一人で作業を完了できたことに安心して、帰り支度をするために階段を登ろうとしました。そして、手すりを掴んだ瞬間、びっくりして手を引っ込めてしまいました。

手すりが温かいんです。

地下室には暖房などなく、コートを着て作業しても鼻が冷たくなるような状態なのに。

おそるおそるもう一度手を伸ばして色々な所を触ってみると、ほんの一部分だけが温度が変わっているとわかりました。階段に背を向ける形で立って手すりに両手を置き、長い時間地下室の中を眺めている人がいたら、こんな風に温かくなるでしょうか…。

そう気づいて怖くなった私は階段を駆け上がってすぐに帰宅し、それから地下室での作業をする時は誰かにお願いしてついてきてもらうようにしました。

ギフトショップは今も私の生活圏内にあります。