これは私が高校卒業後、就職した廃車工場で体験したお話です。

私は、地元にある産業廃棄物の処理や廃車処理をしている工場に事務として勤めていました。廃車の中には水没車・事故車など訳ありの車も多くきます。事故車の中には怪我をした人の姿が見えたりすることもありましたし、工場の中を彷徨っていて事務所に迷い込んでくるものもいました。ですが、そんなのとは比べ物にならないほどの出来事がありした。

それはある夏の午後、お客様が途切れ書類記入などの作業をしていた時でした。目の前に人の気配がありました。ですが、話しかけてくることもなく作業するわけでもなく黙って目の前に立っているんです。

なんかおかしいなと思い、なるべく顔を上げないようにしながら目線を上に向けると髪の長い女性が頭からものすごい大量の血を流しながら私を見下ろしていました。しかも、何故か私を睨みつけているんです。

よっぽど強い怨みを抱えているんだと感じました。そのような霊とは関わってはいけない、目を合わせてはいけない。そう思い気づかないふりをして仕事を続けていましたが、一向に消える気配がありません。どうしようか迷っていると、その女は前かがみになり始め私の顔を覗き込もうとしてきました。

思わず目を閉じて早く消えるよう心の中で祈っていると、それまでの嫌な空気が消え女の姿も無くなっていました。それ以来その女が目の前に表すことはありませんでしたが、もしかしたら事故や何か事件に巻き込まれた人で犯人を探していたのかも知れません。