おじいちゃんの家に遊びに行きました。大きな時計を見せてくれました。「これは振り子時計と言うんだよ」 おじいちゃんが教えてくれました。大きな振り子が揺れています。ボクはいつまでもいつまでも見ていました。

また別の日、おじいちゃんの家に遊びに行きました。振り子時計が増えていました。ゆらゆら揺れています。「おじいちゃん、新しく時計を買ったんだね」 おじいちゃんは何も言いませんでした。もしかして、おじいちゃんを怒らせてしまったのかな?

お父さんとお母さんは泣いていました。黒い服を着た人が、たくさん来ました。振り子時計はひとつになりました。知らないおじさんが振り子時計を取り外しました。振り子時計は無くなってしまいました。おじいちゃんの家にも遊びに行かなくなりました。

とても寂しかったです。とても面白くなかったです。振り子時計を見るのが好きだったのに。おじいちゃんと喋るのが楽しかったのに。お父さんとお母さんも暗い顔をして、泣いたり怒ったりするようになりました。

でも、今日は良いことがありました。ボクの家にも振り子時計が来たんです。しかも、ふたつも。ゆらゆら揺れています。「お父さん、お母さん、ありがとう」 お父さんもお母さんも何も言ってくれません。

お父さんとお母さんは振り子時計になったからです。リビングの真ん中で、ふたり仲良く揺れています。もうすぐボクも振り子時計になります。ゆらゆら揺れる振り子時計になります。